不動産売却のひとつの大きな原因に、所有している不動産が「空き家」で、どうしようもできなくなった、という理由がよくあげられます。確かに空き家は(入居者がいないため)収益性を生みませんが、建物(上物)が建築されている以上、固定資産税や都市計画税が課税されるのは変わりません。


統計局が2015年に発表した約820万戸を超える空室率が大きな問題となりました。次回の調査では「約1,000万戸」を超え、更にインパクトのある社会問題になっていくことでしょう。そこで2017年現在、空き家についてどのような法律が整備されているかを抑えましょう。


1、固定資産税と都市計画税の特例が空き家の解体を阻む


空き家をめぐる法律のなかで、最も大きな存在が固定資産税と都市計画税の課税です。賃貸オーナーにとって税金は悩みの種ですが、空き家を解体すると軽減税率の対象から外れてしまうという特徴があります。この2つの税金は所有者の持つ土地に対して課税されますが、その上に建物が建っていた際は、土地に対してかかる税金は以下のように軽減されます。


(固定資産税:住宅用地の特例)

   200㎡以下の小規模住宅用地・200㎡を超える住宅用地のうち200㎡までの部分→台帳価格の1/6

   200㎡を超える住宅用地のうち200㎡を超える部分→台帳価格の1/3

(都市計画税:住宅用地の特例)

   200㎡以下の小規模住宅用地・200㎡を超える住宅用地のうち200㎡までの部分→台帳価格の1/3

   200㎡を超える住宅用地のうち200㎡を超える部分→台帳価格の2/3

特定空き家に対する軽減措置撤廃の動き


このように、建物の建っていない土地(更地)になった時の税金増額が大きな負担になり、収益性の低くなった物件を解体するという「決断」ができない人も多いという面があります。ただ管理が追い付かず、いわゆる「ゴミ屋敷」など近隣住民の生活にとってマイナスの影響が目立つ物件の軽減措置を解除する、と定めた法律があります。




2、空き家対策特措法


平成27年度から施行されているこの法律は、行政側から、地方自治体など行政が主体となって動くための法律です。段階的な手続きをする法律となっており、まず問題のある空き家を「特定空き家」として、勧告の対象とします。次の段階として、指導を受けても改善しない空き家について、固定資産税・都市計画税の軽減対象から外す、という段階を踏む内容の法律です。

ただ「特定空き家」はどの機関が決めるのか。具体的に指導と勧告はどのようなものなのか、が決定、及び浸透していないため、実際の空き家指定は慎重に行われる、と言われています。国や地方自治体としても、侵害しずらい賃貸オーナーの「財産権」に手をいれるということは、とても慎重にならざるを得ないところ。

3、空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例


もうひとつは、空き家の売買を活発にして、空き家を減らしていく目的で定められた、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。平成28年税制改正大綱に含まれました。この特例は、一定の条件を満たした空き家の売却に対し、3,000万円の特別控除を行うというものです。平成2841日から、平成311231日のあいだの売却が対象です。

一定の条件をまとめると、

〇相続開始まで自宅で、相続により空き家になった。

〇昭和56531日以前に建築された。

〇マンションなど、区分所有建物ではない

〇相続から3年を経過する日の属する1231日までの相続であること

〇売却額が1億円を超えないこと

〇相続から空き家以外になっていないこと(使用履歴がないこと)

〇行政から要件を満たす証明書等が発行されていること

以上の条件を「すべて満たす」必要があります。敷居が高い印象がありますが、控除額3,000万円はとても高額のため、まずは様々な条件と「実家の相続」に限定した適用となるようです。今後の情報に注目していきたいですね。

 
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