相続の不動産の話。ご主人から奥様への相続(一次相続)であれば実家、いわゆる居住用不動産の相続は様々な特例措置もあり勧められています。その後の奥様から子世代への不動産相続(二次相続)は様子変わって難しいもの。特に資産を承継する相続人が複数いる場合は、たとえば不動産を長男に承継して、次男に同等分の(法定相続分の)現預金を渡さなければいけないという、ハードルの高い遺産分割があります。
1、「実家」を分割共有してはいけない理由
そうはいっても不動産の同等分となる現預金はなかなか準備できないもの。そこで、実家を長男と次男で「分割共有」するという方法を思いつきます。そうすれば現預金を準備する必要もなく、実家の登記変更だけで足りるはずです。ところが、実家の分割共有はとても危険です。その理由について考えてみましょう。
2、意思決定者は兄弟だけではない
兄弟はとても仲の良い場合が多いです。それはとても素敵なこと。ただ、お互いが「大人」になって、財産分割を向き合う場合、「関係性が変わってしまう」というケースも多い。相続後、不動産をどのタイミングで売却するのか、売却はしなくともリフォームをかけるのか。流行りの視点からいえば、民泊として活用することに可能性はあるのか。
この時にポイントとなるのが、兄弟の「配偶者」の存在です。長男次男、兄弟ごとに意思決定者が一人増えるといいましょうか。兄弟間が「おにいちゃんに任せるよ」となっても、配偶者が意見を述べて話し合いをゼロに戻す、という展開も多いと税理士やFPが頭を抱えます。
この問題の解決のためには、早めに相続対策を進めておくことが確実な対策です。兄弟の意思確認、配偶者との意見の同意、そして(必要な場合は)現預金の確保。可能な限り公的遺言などで相続対象者の意見をしっかりと残して、相続対策として進めるようにしましょう。
専門家である税理士やFPを入れるのも有効な方法です。ただし、相続はなぜ揉めるのかを当の税理士などに聞くと、「感情のすれ違い」という意見は以外ほど多くを占めていることに驚かされます。合理的な相続問題の解決のために専門家を入れ、また一方的に不動産処理の具体策をひとりの兄弟が進めると、思わぬところから相続対策が暗礁に乗り上げてしまうことも。
実家は兄弟みんなが仲良く「育った場所」ということを忘れず、それでいて相続時に問題とならないように、しっかり話し合って対策を進めていきたいものです