70代の親世代と40代の子世代。周囲の話を聞くと、そろそろ「相続」について話し合っておきたいというタイミング。相続対策の具体化として、公的遺言書の作成があります。遺言書は資産所有者自身が自筆する自筆証書遺言と、公証役場に行って作成する公正証書遺言があります。また遺言のように法的拘束力(遵守しなければいけない)こそありませんが、様々な思いを残すことができるエンディングノートもあります。
1、みんな元気なうちに不動産売却の「遺言」を
お正月やお盆が終わると、相続や贈与の専門家は忙しくなるという話を聞きます。たとえば実家に帰省して、「ねえ、そろそろ相続について話をしよう」と言っても、それはすなわち親世代が亡くなった時について話をすること。年明けの祝いの席に相応しくもありません。ただ、このような話はメールはもとい、電話でもなかなか出来るものではありません。私事ですが、筆者と妻は東京にて生活していながら筆者の実家は北海道で、妻は九州の長崎。相続をどのタイミングで話をするかは、極めて切実な課題です。
先祖代々引き続いてきた土地があるなど、既に税理士に話をする機会がある家庭などは、遺言を作る機会もあるでしょう。ただ、日本の全家庭においてそれはあくまで一部ではないでしょうか。2015年に相続税の法改正が行われて、相続税が課税されるかどうかのラインの家庭が「相続の話し合いが一筋ではいかない」という現場の声もあるようです。特に財産処理に時間と専門的知識の必要なものが不動産の対応です。親世代が亡くなって、遺産分割をする前に、不動産の処理は目途をつけていくことが必要です。不動産の相続の代わりに十分な現預金を準備しなかればいけないケースも多い。
2、不動産売却に「公的遺言の前段階」を
そこで、親世代が亡くなったら不動産を誰が継ぐのか、共有名義とするのか(あまりお勧めできませんが)、相続したらすぐに売るのか、生前贈与するのか、「公的遺言の前段階」として話し合う機会はとても大切です。生前に可能な「財産処理」は早めに話し合うこと。税理士やFPは、またはお正月などに発売される雑誌などでもこのような理由から特集が組まれるようになりました。そして、親世代の話を聞くことの多い介護関係の方や、行政の担当者も強く思っています。今後、更に大きな社会課題となっていくことでしょう。
これは不動産売却の次段階として、住む人のいなくなった「空き家」問題とも絡んできます。空き家問題は地方創生の大きな課題。社会が一体となって取り組んでいかなければいけないテーマです。