地方から都心へ出てきた方の中には、「地元で空き家を所有している。都心から地元へ戻る予定はないけれども、今ある空き家をそのままにしてはおけない…」という方がいらっしゃるのではないでしょうか。自分が足繁く通って整備・管理することは叶わない、しかしそのまま放置してしまうと、不動産としての価値は落ち続け、コストばかりかかってしまう。今は大きな問題でなくても、どこかのタイミングで解消しなくてはならない事案だと思います。
空き家対策のひとつとして、「自治体が運営する『空き家バンク』に登録し、地方への移住希望者と賃貸・売買契約をねらう」という方法があります。
■空き家バンクとは?
「空き家バンク」とは、地域住民が所有する空き家物件情報を集約し、移住・交流希望者向けに、自治体のWEBサイト上などで提供する仕組みのこと。空き家バンクに掲載されている空き家の物件は、実際にその地域の自治体に登録された空き家だけが掲載されています。
不動産会社を通して居住者を募集すると、契約時に仲介手数料を取られることが普通ですが、「空き家バンク」は営利を目的としない自治体が運営しているサービスのため、手数料は発生しません。
■空き家バンクのメリットとデメリット
どんなサービスにも良し悪しはあるものですが、「空き家バンク」の場合はどうなのでしょうか。
【メリット】
・自治体が運営するサイトに掲載されているという安心感がある
・地元の不動産屋が紹介しないような、意外な物件を見つけられる
・契約にあたり、自治体から補助金が出るケースが多い
空き家バンクの利用率向上・移住者の増加を目的として、自治体は様々な施策に取り組んでおり、即効性が見込めるとして積極的に取り入れられているのが、補助金制度です。細かな部分は自治体によってバラバラですが、大きく分けると、物件所有者へ向けた補助金と、移住希望者へ向けた補助金の2種類があります。所有者に対しては、空き家バンクに登録された物件について、老朽化を修繕するための補助金が出ます。他には、固定資産税の減額や、家具の処分費補助などもあります。一方移住希望者に対しては、物件の修繕費に対する補助金を移住希望者からも申請できるようにしている他、賃貸または売買成約時に補助金や助成金が出るケースがあります。
【デメリット】
・自治体は契約行為に関与することがなく、個人間の直接交渉が前提となる
・移住希望者に、実際に空き家を見てもらうことが難しく、契約までのやり取りが長くなりやすい
「個人間の交渉」という前提条件があるため、それによって発生する手間の部分がデメリットになりやすいようです。移住希望者としては「訳あり物件に住みたくはない」という気持ちで、所有者へ入念に連絡をとることが予想されますので、その手間を考えると、不動産会社を通したほうが楽なのでは…と考える方も出てくると思われます。
地方移住を促すという、一種の社会貢献的な面がある「空き家バンク」。地方に物件をお持ちの方は、検討されてみてはいかがでしょうか。