今回は、不動産売買を検討している方に向けて「買い付け証明書」について説明します。
不動産売買を行っている業者の中には、ノルマが厳しいせいか、とにかく高圧的に契約をせまってくる担当者もいますよね(逆に猫なで声で、「あなたのためのマル秘物件ですよ、さー急いで」みたいなソフトタイプのもいますけど)。
どちらにしても、買主や売主の自由な意思決定を阻害して、自分の実績を上げようとしているので注意が必要です。普通の人にとって不動産は、一生に数回しかない大きな取引。ですから、特殊な心理状態に追い込まれるのもやむをえません。
例えば「この物件いいな、でも明日中に返事って言われてもな」という時は、どうしましょうか。家族や友達に相談するのはもちろん、担当の業者が親身にアドバイスしてくれれば一番です。物件のいいところと悪いところ、特に悪いところをはっきり言ってくれる担当者は信用できます。
担当者にいますぐ決めてと言われて、舞い上がってしまい「買い付け証明書なり商談申込書」を書いちゃった場合はどうなるでしょう。安心してください。これに対して法的効力は一般的に認められません。買い付け証明書を撤回しようとすると、業者は契約締結上の過失だ、売却準備のコストがかかったと脅してくるかもしれませんが、毅然と対応すれば業者に勝ち目はありません。
買い付け証明書は「買おうと思います」という書面であって契約の申込みでも何でもありません。宅建取引は宅建業で厳しく制限されていますから、法に基づいた重要事項説明を受けてからでないと契約は成立しないわけです。
ひどい業者になると買い付け証明書を出すというと証拠金をいれてくれという業者もいます。1万円だったり10万円だったりですが、これももちろん違法です。契約締結時には代金に充当しますからと逃げ口上でいいますが、いったいどういう性格の金銭なのかわかりません。買い付け証明書を撤回すると言うと、没収しますとか言い出したりします。この場合、宅建業法違反はもちろん刑事事件になりかねない対応です。
買い付け証明書は宅建業法に基づく重要事項説明を受けない限り、一切の損害賠償義務を負うものではありません。もし書いてしまっても、気が変われば撤回してなんの問題もないのです。ただモラル上、あまり時間をおくのはどうかと思いますので、有効期間を入れるのはエチケットですね。宅建業者は百戦錬磨ですが、法的効力に勝つことはできません。