私は高校や大学を受験を目指す生徒さんのために、家庭教師をしていた時期があります。そのとき「お子さんの入学にあわせて、不動産の扱いを考えなければいけなくなった」というケースにいくつか出会いました。受験シーズンの真っただ中ですが、こういう事例もあることを参考にしていただければと思います。
ケース1 お父さんの単身赴任先にある国公立大に合格したのに
ある生徒さんは、お父さんの単身赴任先にある国公立大学と、地元の私立大学に合格を果たしました。国公立大学には自宅から通えませんが、お父さんがお持ちのマンションで暮らす予定だったので、下宿代が家計を圧迫するということもない予定でした。
しかし、お父さんが単身赴任先から地元の本店へ呼び戻されることになります。本当に急な話でご両親も生徒さんも、そして私も驚きました。
お母さんから
「お父さんの住んでいたマンションで1人暮らしになるけれど、国公立大に進学させるべきでしょうか? それとも、1人暮らしは不安だから、地元に進学させるべきでしょうか? 私立大学は学費が高いけれど、マンションを売ればその分の資金を学費に充てられます」
と相談を受け、お話を聞いているうちに1つ疑問が湧いてきました。
「生徒さんのご希望はどうなんでしょうか? 1人暮らしの不安や、未知の土地での生活ということを乗り越えてでも、国公立大で学びたいのでしょうか?」
そう、急な状況の変化で、誰もが動揺してしまい、生徒さんの気持ちをじっくり聞く時間を持ってていなかったのです。結局、生徒さんのご希望をお母さんがじっくり聞いた結果、地元の私立大学に進学することになりました。
ケース2 スポーツ推薦で合格した生徒さんを寮に入れるべきか
スポーツ推薦で高校進学が決まった生徒さんがいました。その高校では、要求される学力の水準が高いため、高校進学までの間、勉強の習慣をつけるために私がご相談に応じていました。
高校は、自宅から通える距離なのですが、よりスポーツ漬けの生活を送るために、寮に入れるかどうかを、ご両親は心配していました。このご家庭は、スポーツを熱心に指導したということはあまりなく「スポーツ推薦をもらえるほど本人に才能がある」ということ自体に、驚いて慌てている様子でした。
私が生徒さんと接していて感じたことは、
「素直で、言われたことは実行する生徒さんだけれど、自分の意見をあまり言わず、周りの希望を優先してしまいがちなところがある」
ということでした。周囲の人間が「寮に入った方がいい」と生徒さんに言うと、自分の考えや気持ちをおいておいて「はい、入ります」と言ってしまいそうな感じがしました。
そこで、ご両親とも話し合い、
「周囲の人が指図するのではなく、ご本人に選ばせましょう。部活にかかる費用や寮費、学費などについて、ご両親に思うことがあっても、あまり言わないようにして、まず本人の気持ちを聞いてから、周囲の大人が意見を言うようにしましょう」
ということに決まりました。
その生徒さんは、寮には入らないという道を選びました。現在は成人されて、実業団の選手として活躍をしています。
お子さんの進学や就職、そしてご自身の新しい勤務先が決まる時期ですよね。不動産の売買や賃貸物件の入居・退去も一気に増える時期です。
ただ「ともかく行動を起こさなければ」と考えるのではなく、お子さんの気持ちやご本人の気持ち(単身赴任を希望するか、家族みんなで引っ越すことを望むか、など)をしっかり考える時間を持ち、希望を明らかにして進むことが重要でしょう。