私は先日「今日から病気も友達」という本を出版しました。その本の中で、病気やケガによって休職・休業をせざるを得なくなった場合に、家計収入や支出のバランスをどう取り直すかについて、FPとして述べています。
大きな決断は少し時間をおいてから
急病やケガで仕事を休まなければいけないときは収入が減ることと、医療に関する支出が増えることで家計は苦しくなります。「手持ちのお金がどんどん減ってしまう」という不安が募りますよね。
ただ「あなたは病気かもしれません」と告げられてから、おおむね1週間ほどは、患者さん本人も周囲の人も、普段とは違う心理状態になります。そのため、大きな決断をやすやすとしてしまう可能性があります。
「いっそ仕事を辞めてしまおう」
「自宅を売って療養費用を作ろう」
「パートナーが仕事を増やして、経済的危機を乗り切ろう」
などの決断は、少なくとも病気の告知をされてから、1週間以上の時間をおいて考えましょう。
住宅の売却は本当に良い方法か?
住宅ローンや固定資産税の負担がきついから、いっそ住宅を売却してしまおうと考える人もいるかもしれません。ただ、住宅ローンはいつか支払いが終わる時がきますし、老後の収入が減る時期には、住宅に関する負担がなくなります。
自宅を売却することで住宅ローンの負担が減ったり、まとまった現金を手に入れることも可能かもしれませんが、賃貸に住み替えることで、老後にもずっと家賃を支払い続けることに耐えうるかどうか、よく考えなければなりません。
とはいえ収入が減るのは厳しい……
住宅ローンに加入した際に、同時に「団体信用生命保険」に加入している方がほとんどでしょう。団信の種類が増えており、「三大疾病保障付き」「七大疾病保障付き」のものに加入している人は、病気の種類や病状によっては団信を利用できる可能性があります。
また、会社員や公務員の方は、加入している健康保険から傷病手当金を受け取ることができます。現在の収入のおよそ6割程度の給付が受けられます。なお、労働災害が原因で働けない場合には、労災保険の休業補償給を受けることになります。
これらの制度を利用しても、住宅ローンの支払いが厳しい場合には、借り入れをしている金融機関に相談し、住宅ローンの返済額を一定期間だけ抑えてもらうリスケジュールという方法も考えられます。
そして、医療費については健康保険を使って治療を受けているなら、高額療養費制度が利用できるので、多額の支出が今後もずっと続くというわけではありません。
病気にかかり休業することになったときには、「収入が減るんだから、住宅は売却しなくては」「まとまったお金を作らなくては」と慌てて考えるのではなく、1週間程度は大きな決断をさけ、利用できる制度を利用して、家計収入の安定化を考えましょう。
不動産の売却といった大きな決断は、その後で精神状態が落ち着いてから考えても、遅くはないでしょう。早すぎる決断で後悔しないようにしましょう。