相続税に対する関心が高まっています。しかし、その一方で節税ばかりがクローズアップされ過ぎているという懸念があります。相続税対策の王道として不動産投資がありますが、投資にはリスクがつきものです。節税ありきでリスクを過小評価したり、節税とのバランスが悪い投資を行う人が増えています。折しも、アパート建設ブームで賃料相場が崩れ、空室リスクが高まっているという新聞記事を目にすることが増えています。また、金融庁も銀行に対しアパートローンに偏重した営業を行うことがないよう、指導を強化しています。こうした時期であるからこそ、節税と投資のバランスを慎重に考える必要性が増していると言えます。
不動産を利用した相続対策は確かに有効ですが、当然リスクを伴います。慎重に判断すべきではありますが、財産のほとんどが不動産であれば不動産活用以外に相続対策の手はないのも事実です。しかし、節税にばかり重点を置いた投資が失敗すれば、結局財産を失ってしまうことになりかねません。
相続税節税と不動産投資をどうバランスさせるかというひとつの指標が節税後利回りという考え方です。
節税後利回り=年間家賃収入 ÷ (投資額 ー 節税額)
投資額からその投資により節税できる相続税額を差し引きします。年間家賃収入を上記の金額で割れば、節税後利回りが算出できます。
1億円の投資によりアパートを建てることで、で3000万円の相続税が節税できるとしましょう。年間の家賃収入が700万円あれば、節税後利回りは10%ということになります。利回りが10%ということは、投資額から節税額を引いた金額を10年で回収できるという計算です。5%であれば、回収に20年が必要となります。つまり、この数値が高いほど、リスクは少なくなるということになります。理想を言えば、新築で空室リスクが低い10年の間に回収したいものです。ということは、10%以上の節税利回りが理想ということになります。
では節税利回りを高めるにはどのようにすれば良いのでしょうか。最も効果があるのは、節税効果が高い人が対策を行うことです。つまり、もともと高い所得があり、高い税率で所得税を納めている人の方はせい津税額は大きくなり、投資効率が高まります。
また、土地を持っている人も土地を購入する必要が無いことから、投資額を抑えることができます。現金や預金を持っている人も効果があります。
このように同じ投資でも人によって節税後利回りは異なることを理解する必要があります。不動産投資のリスクは人によって異なるのです。この点を理解したうえで投資を行うこで、相続税節税と不動産投資のリスクをバランスさせることができるのでは無いでしょうか。