「変動金利」を選択するか。それとも「固定金利」を選択するか。多くの人が銀行から資金を調達するにあたってはどちらが良いのか悩みます。読んで字のごとく「変動金利」は借入期間中に金利が変動する。「固定金利」は金利が固定されている。おおむねこの解釈で間違いは無いのですが、実はそこには落とし穴があります。「変動金利」と「固定金利」の違いを正確に理解していないと、後に後悔することにもなりかねません。この機会に両者の違いについて明確にしておきましょう。
最近は銀行融資の選択肢が随分と増えました。とりわけ金利に関わる選択肢はかつてとは比較にならないほど増えています。固定期間が10年、なかには15年や20年、35年といった長期のものに加えて、2年、3年、5年といった期間の固定期間も金融機関によっては選択することができます。選択肢が増えるのはありがたい反面、これまで以上に高い金融リテラシーを求められるようになっているのも事実です。
そもそも、なぜ固定金利を選択するのでしょうか。金利動向に関係なく長期間返済額を一定にすることがその目的のはずです。しかし、2年や、3年といった比較的短い期間の固定金利は金利設定を低くすることが可能であり、客寄せ商品的な使われ方をしている面があります。一方の変動金利は、住宅ローンでは6ヶ月ごとに金利の見直しが行われるのが一般的です。融資金利はプライムレートと呼ばれる金融機関内の金利指標に連動するように金利設定が行われています。
固定金利と変動金利では金利のベースになっているものが全く異なっています。その結果、変動金利の金利水準は長い間大きな変動も無く安定しているのに対し、固定金利の金利水準は市場金利の動向に合わせてめまぐるしく上下動しているという事実に驚かれる方も少なくありません。
固定金利はいわゆる長期金利がベースとなっています。これは需要と供給の市場メカニズムで決まるという色合いが強く、将来の物価変動や将来の短期金利の推移、金融政策などについての予想が反映されます。一方の変動金利は「無担保コールレート」と呼ばれる金利がベースとなっており、日本銀行の金融調節によってコントロールされています。
つまり、固定金利のベースとなる長期金利は市場メカニズムで決まり、短期金利は、基本的にその時点の金融政策の影響下にあると言えます。
それでは実際に今の日本の金融市場で考えるとどの選択が良いのでしょうか。日銀は2%の物価安定目標の達成を目指し、今後も金融緩和政策を継続することが期待され、短期金利は低くコントロールされた状況が続くと思われます。
その一方で、長期金利はさまざまな要因が金利を左右します。期待インフレ率や期待潜在成長率、政府の国債利払いや償還に対して投資家が不安を感じれば長期金利が上昇することになります。また、最近では米国の金利上昇が日本の金融マーケットにも少なからぬ影響を及ぼしています。そう考えると、将来の金利上昇リスクは高まっているのかも知れません。