アパート建設を手掛ける建設会社の業績は順調、銀行でもアパート建設向けの融資が伸びています。
こうした足もとで起こっている事象からも不動産業向け融資が伸びていることは容易に想像出来るはずです。
その一方で、需給が崩れ、空室率は過去最悪の水準に達していると報じている新聞記事もあります。
そして、日銀は国内金融機関による不動産業向け新規融資は5兆8943億円と前年比16%、年度の上期としては、バブル期の1989年度上期(5兆円強)を超え、過去最高の水準となっていることを明らかにしました。
大規模金融緩和による低金利環境で、アパート向け融資や不動産投資信託(REIT)向けなど不動産業向け融資が伸びていると分析しています。
同時に日銀は不動産向け融資について「過熱方向と、供給過剰による調整方向と両方の動きがある」と、警鐘を鳴らしています。
果たして真実は・・・我々は何を信じていいのでしょうか。
1980年代のバブルの頃、資金が不動産や株へと流入し、実態以上に値上がりしました。地価はどんどん値上がりし、東京23区の土地の価格で、アメリカ全土の土地が買えるとまで言われました。そんなバブルを終わらせるきっかけとなったのが、大蔵省(現財務省)の総量規制と日銀の金利引き上げです。大蔵省は不動産向け融資の伸び率を貸出残高全体の伸び率を下回るように、銀行に対して自主規制を促しました。
1989年5月には2.5%だった公定歩合は1990年8月には6.0%まで急激に上昇しました。
そして、今、バブルの崩壊を目の当たりにしてきた人間にとって、今の環境はどこかあの頃と似通ったものを感じずにはおれないのです。
米国の大統領選挙をきっかけに上昇し始めた金利は、日本にもその影響を及ぼし始めました。長期金利の上昇に伴いREIT価格は既に下落しています。
バブル崩壊の引き金を引いた金利上昇が図らずも起こりつつあるのです。現在の金利水準はまだまだ低位であり、不動産投資に大きな影響を与えるに至っていないとかんがえることもできますが、それでも金利動向に変化が生じていることは事実です。こうした状況で加熱する不動産投資に対し銀行が慎重姿勢を見せるようなことが起これば、バブル崩壊の時と同じ条件がそろってしまいます。
いつか見た光景が重なってしまうのです。 世の中は常に一方向へ行きすぎてしまいます。そして、その修正が起こるのが常です。
それがわかっていても、現在がどの段階にあるのかは、後になってみないとわからないものです。
しかし、警戒が必要な状況にあるのは間違いないのではないでしょうか。