3月は危機だ
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不動産賃貸仲介業界にも繁忙期と言われる時期がある。1月から3月だ。
この時期には多くの引越しが集中し、仲介店舗は、目一杯、来店者に物件を紹介する。
しかし、東京で賃貸仲介をやっていれば、ひと昔前と違ってこの時期に、さまざまな問題が発生している。
特に苦労するのは、3月末の引越しだ。首都圏、特に都心部では年々と空室が少なくなっており、数年前に比べユーザーに紹介できる物件の選択肢が少なくなってきている。
仲介店舗の現場では、現場の営業社員はここ数年、物件の少なさを実感しているのではないだろうか?
このような状況を招いた要因はいくつかあるように思う。
まず不動産取引の契約金は、当然のことながらかなり高額だ。
礼金や敷金などを考えると、賃料の半年分ほどは準備をしなければいけない。
しかしながら、人々のライフスタイルの変化でこのような高額な買い物をする機会は、少なくなっている。
クルマもカーシェアを使うし、音楽もサブスクリプションモデル(月額聴き放題)でダウンロードする。要は何か一つのことに、そこまで多くのお金を払わなくなったのだ。
このような社会的背景から、高い契約金を払って引っ越すぐらいなら、現在の部屋を更新したほうが良いという選択肢を取る人が増えたのではないだろうか。
俯瞰して見れば、都心の管理会社は空前の好景気なのかもしれない。
仲介会社と違って、管理会社は稼働率を重視する。更新してくれる入居者が増えると、空室リスクが減り、安定的に管理手数料が入るからだ。
これはこれで問題がないのだが、希望するエリアに住めないユーザーがいることを忘れてはならない。
人手不足と東京への人口集中が業界を直撃している
また他の原因として、地方から都心の上京する人の数が年々増加していることも原因のひとつかもしれない。
そう考えると
物件の空きがない → 紹介できる部屋がない → 希望のエリアには住めないという現象が都心で散見されることになる。
また、ようやく不動産会社から物件紹介を受け、部屋を決めたとしても、次の問題が発生する。
それは、引越し会社の手配が困難になり、希望の入居日に入居ができない問題が多く発生していることだ。これは、引越し会社の人手不足や特定企業不祥事による自粛が原因と報じられている。同様の問題は宅配でも大きな問題になっている。
引越し時期が集中するこの3月は、毎年引越し会社は慢性的な人手不足に陥る。
問題はかなり広範囲に拡がっている。
不動産賃貸仲介会社の人間と話しをすると、このあたりの繁忙期の時期の集中の問題は、年々根深くなっている実感がある。
賃貸仲介業というのは、景気に左右されないと言われてきた。
しかしながら、人手不足、購買機会、そして上京者数の増加、と言われる社会問題が、少しずつ都心の賃貸仲介業界に影響を与えつつあることを忘れてはならない。潮目は静かに変わっているのだ。 (北風)