【コラム】甲区乙区 不動産ニュースご意見番

(画像=Pixabay)

賃貸仲介の現場にいると賃貸管理会社からの要望にいつも頭を悩ませられる。物件図面に書かれた「備考欄」もその一つだ。後には「(その他費用)抗菌処理代15,000円」と続く。

本欄では札幌アパマンショップ爆発事件について触れたい。

仲介会社にとって抗菌処理はくせ者だ。

お客様の中には「そんなものいらないから安くしてくれ」という方がたくさんいる。要望を受けて、管理会社に伝えるとこんなやり取りが行われる。

「抗菌処理代は外せませんか?」

「外せません。強制です。」

「そうですか…。」

このようなケースは、悲しいかな何度も何度もある。

時には「強制ではなく、任意です。」と言われることもあるが、次に「任意といえば任意ですが、外せないのです」という意味不明な回答をされたこともある。 

「どうしても払いたくない」というお客様の要望を受けて「なんとかこれ、外してください」と伝えれば、必殺の「審査落ち」という回答が帰ってくる。

これが現実で、それ以上でもそれ以下でもない。「抗菌処理代」を巡って、お客様と管理会社との間を何度もやりとりする。仲介会社ならばもれなく経験していることだろう。

そのサービスはお客様を向いているのか

「抗菌処理」の中身についても疑問があった。

ある時、「この抗菌処理代って何するのでしょうか?」と管理会社の担当者に質問したことがある。その時は「専門の業者がクリーニングをします」と言われた。その会社では、専門業者を使って抗菌消臭処理をしているのかもしれない。

しかし、札幌のケースのように、スプレー缶の中身を噴霧して終わらせる会社もあるのだろう。専門業者が動くのに比べると、ずいぶんと簡単に済ませるものだな。という印象を覚える。

私は抗菌処理が全く不要なサービスだとは思わない。

お客様の中には、匂いに敏感で「他人の生活臭が気になる」という方もいるし、潔癖症とも言える人がいて「もっとお金を払っても良いから」徹底的にやって欲しいと言われることもあるからだ。

しかし、そういったお客様にとっては、スプレー缶は物足りないサービスでしかない。つまりは、不要とは言い切れないが、本当にお客様の側を向いているサービスなのかどうかは疑問が残る。

店舗には販売ノルマがあったと報道されているが、仲介会社である私の立場からは管理会社FC本部と加盟店との関係は分からない。しかし、商売なのだから、加盟店はスプレー缶を仕入れたら売る。在庫は抱えていてはいけないのは当然だ。

つまり表向きは強制ではないにしても、売上計画の中に抗菌処理代は組み込まれる。売らなければ計画倒れになる。かくして「外せないが任意」という不思議な決まりが生まれることになるのではないだろうか。

札幌事件で、やはり「不動産は悪どい」といった声がSNS上であふれている。信頼回復のためには抜本的なところから見直していかなければいけないのだろう。

年の瀬に「不動産業は人の役にたっているか」を見つめ直したい。(北風)

※本欄は不動産業界の第一線で活躍する方による外部コラムです。

 
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