(画像=リビンマガジン Biz編集部撮影)
9月1日は「歌舞伎町ビル火災の日」だ。
歌舞伎町ビル火災とは、2001年9月1日に東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビル「明星56ビル」で起きた火災である。44名が死亡し、日本で発生した火災としては戦後5番目の被害となった。
多くの死傷者を出した原因は、ビル内の避難通路の確保が不十分であったためとされた。実は、火災が起こる前から、違法な内装や防火管理の不徹底などで東京消防庁から警告されていたという。出火原因は放火とみられているが、2018年現在も犯人は捕まっておらず、原因は確定していない。
この事件により居合わせた客と従業員のうち、現場ビル3階にいた19名中16名、4階にいた28名全員の計44名が死亡、3階から脱出した3名が負傷した。現場ビルには、自動火災報知設備は設置されていたが、誤作動が多いために電源が切られ、4階に至っては天井を火災報知機ごと内装材で覆い隠されてしまっていた。
この火災を機に、2002年10月25日に消防法が大幅に改正。ビルのオーナーなどの管理権限者は、より重大な法的責任を負うこととなり、防火管理意識を高めるきっかけになった。消防法の改正内容は主に、「火災の早期発見・報知対策の強化」や「違反是正の徹底」、「罰則の強化」などが盛り込まれた。
一方で、優良に防火管理を行っていると認められる防火対象物には、定期点検報告義務を免除する特例認定を受けることができ、特例認定を受けた場合には「防火優良認定証」を掲示できるようになった。
不動産所有者としてどのような対策が必要か?
火災による被害について不動産所有者の立場から考えた場合、火災の早期発見や報知対策も当然ながら大切だが、重要なのは火災保険加入の徹底である。オーナーが建物の火災保険に加入するのと同時に、入居者全員にも賃貸契約時に火災保険に加入してもらうことで、多くのトラブル防止に役立つ。
前述の歌舞伎町ビル火災の原因は放火と見られているが、加害者が特定できない災害には、損害賠償を求めることができない。しかし、甚大な被害があった場合でも、所有物件に入居者がいる限り、入居者が生活できるレベルに建物を復旧しなければならないのだ。
この時の修繕費用は場合によって大きく変動するが、火災保険に加入しておけば相応の保険請求をすることができる。また、毎年掛かる保険は経費にできるため、賃貸経営への壊滅的なダメージを回避する手段としては非常に有効である。
災害が起こらないことを願うばかりだが、不動産業に関わる人には、もしもの事態に備える義務がある。