(画像=リビンマガジン Biz編集部撮影)
1970年(昭和45年)7月18日、東京都杉並区において、日本ではじめて公式に光化学スモッグが観測された。
東京都杉並区にある私立立正高校で、体育の授業中に生徒たちが突然目の痛みや頭痛などを訴えて倒れ、43人が病院へ運ばれた。また、東京近郊でも多くの人が目やのどの痛みを訴えた。
車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)や炭化水素が紫外線によって有毒な物質に変化して起こる光化学スモッグであると東京都公害研究所は推定した。
それ以来、自動車の排気ガスの規制が行われるようになり、晴れた日には光化学スモッグ注意報が発令されるようになった。夏にはよく光化学スモッグ注意報が発令されたことを呼びかける自治体からの放送があったものだと思い出す人も多いだろう。
スモッグ(smog)とは、煙(smoke)と霧(fog)を合成して作られた言葉だ。汚染物質が空中に浮遊しているため、周囲の見通しが低下して霞がかかっているような状態になる。
ちなみに環境省の発表によると、平成29年の光化学スモッグ注意報月別発令日数が多い県は
1位 埼玉県、千葉県:年間15日
2位 群馬県:年間11日
3位 神奈川県、岡山県:年間8日
4位 東京都、栃木県:年間6日
となっており、圧倒的に首都圏での発生が多いことがわかる。工場や自動車の多さと比例しているようだ。
近年では環境省の呼びかけにより都道府県と連携して事業者の有毒な物質の排出状況を把握し、排出規制遵守を促すなどの対応がなされている。そして工場や自動車などの事業者は、排気ガス対策としてフィルターを装着するなどのさまざまな工夫を重ねているため、だいぶ光化学スモッグも減少した。それでもまだ、ディーゼルエンジンから排出されるガスの中には炭化水素などが多量に含まれており、今後さらに改善の余地がある。
また、光化学スモッグが多く発令されているのは、5月、6月、7月、8月と、晴れた日が多い月に集中しており、紫外線と深く関係していることが分かる。光化学スモッグ注意報が発令されたら、外出は避け、できるだけ空気の良い室内で過ごすなど、工夫をしたいものだ。
繁栄の光と影が交錯した70年代
光化学スモッグに限らず、70年代になると公害問題が全国あちこちで頻出した。高度経済成長期に密集して工場が建設されたことや、自動車化が進んだことが大きく影響した。
なかでも首都圏の住宅密集、人口集中は環境汚染の大きな原因とされ、豊かさを享受していた国民が、その反動を知った時期と言えるだろう。
光化学スモッグが初めて観測された70年には、住宅業界でも大きな動きがあった。住宅金融公庫による公庫融資付き分譲マンション制度が始まったのだ。これは民間デベロッパーが建設した分譲マンションにも公庫から好条件の融資がつくもので、住宅ローン付きでマンションが購入できるという制度だ。これにより分譲マンションの大量供給が始まり、1970年代のマンションブームの引き金にもなった。