(画像=リビンマガジン Biz編集部撮影)
1972年(昭和47年)6月27日、日照を奪われた住民が起こしていた訴訟で、違法建築の隣家に対して、最高裁が日照権と通風権を法的に保護するべきだという判決をはじめて言い渡した。
これにより日照権・通風権が確立した。昭和40年代に中高層マンションが増加したことで、全国で頻発していた裁判の方向性を決定づけた。
日照権とは、建築物の日当たりを確保して健康的な生活を送る権利のことで、近隣にマンションなど高層の建築物が立てられ、日照を阻害されることが予想される場合に、建築差し止め請求や、損害賠償訴訟を起こす根拠となる権利だ。日照権は法律や条文などで規定されているわけではないので、その根拠が一定しているわけではない。
しかし、日照権は多くの判例があり、守られるべき権利として確立された存在だ。
建築基準法では、日照権や通風権などを確保し、居住環境を守るため斜線制限や日影規制などによって建築物の高さを制限している。
日照権をめぐる住民の反対運動や訴訟。しかし…
しかし依然として各地で高層マンションなどの建設をめぐって、周辺住民による反対運動や訴訟は後をたたない。しかし、住民側が勝訴するというケースは少なく、解決に至らないということが多いというのが現実であるようだ。
また、首都圏の人気エリアでもあり、住みたい街ラキングにも名を連ねている都市で起こった住民訴訟の問題が数年前に話題になった。
その地域は、もとは閑静な住宅街であったということだが、駅にも近く需要が多いため、高層マンションの建設が徐々に増えていったそうだ。
当然、今までにはない高層マンションの建設に周辺住民は戸惑いと怒りを隠せない。日照権などの問題から周辺住民は強く反対していたというが、結局マンション建設予定地には、その反対を押し切ってマンションが建設されてしまった。
しかし、そのわずか数年後には、さらにそのマンションのすぐ目の前(南側)に別のマンションが建設されることとなり、南側が真っ暗になってしまうことになったマンションの住民たちは大規模な反対運動と訴訟を起こしたものの、結局勝訴できずに新しいマンションは建設されてしまったという。この地域では同様に南側に何度か新しいマンションが建設されるたびに反対運動と住民訴訟を繰り返しているのだということだ。
反対運動に取り組む人だけではなく、自分の住まいが誰かの迷惑になっているというのはマンション住民にとっても気分の良いものではない。しかし良い土地は限られているだけに、難しい問題である。
物件探しの際、おすすめポイントのひとつとしてあげられているのが「物件の南側が公共施設や学校、公園などの場合、高層マンションが建つ可能性がない」ということだ。目利きはこういった将来の開発までも意識しながら物件の品定めをする。
言わば、人類共通の財産である太陽を巡る争いは、今後も、続いていくだろう。