9月20日は金田一耕助シリーズ『「病院坂の首縊りの家」で生首風鈴が発見された日』だ。
『病院坂の首縊りの家』は、横溝正史による長編小説「金田一耕助シリーズ」の一つである。
物語は、金田一が東京都・高輪の写真館を訪れるところから始まる。そこで写真館の長男・直吉は金田一に、ある自殺の調査を頼む。というのも、直吉は「病院坂」にある、かつて自殺があった建物で結婚記念写真の撮影依頼を受けたからだ。この気味が悪い建物は、今は廃墟になっており、誰も住んでいないのだという。
それから数日後、直吉が廃墟へ撮影で訪れると、そこで風鈴のように天井から吊り下げられた男性の生首を発見する。
物語中では、1953年の本日がその日だ。
この生首発見が発端となり事件は大きくなっていく。複雑に入り組んだ事件の調査は難航を極め、金田一耕助をもってしても解決することはできず、一度は迷宮入りとなる。事件が再び動くのは20年後、金田一は知り合いの探偵から直吉が何者かに命を狙われているという話を聞き…。
「病院坂の…」は、あの「じっちゃん」でも解決に20年以上を要した難事件だった。横溝正史ファンの中でも人気が高い作品である。
舞台の高輪には、「病院坂」の描写に似ている坂が実在する。しかし、実はその坂には特に名前は付いていない。
病院坂という名称は、作者である横溝正史が自宅を構えていた東京都・成城にある。名称は、この坂から付けられたと、熱心なファンの間で推測されている。
横溝は自宅の敷地内に、書斎を建てており、ここを執筆場所とした。書斎は亡くなるまで使用していたが、その死後は、使われることなく放置され、老朽化が進んだため、取り壊されることになる。
しかし、書斎の保存を願う関係者が移転案を考え、山梨県出身の関係者の働きかけで、県内に寄贈移築された。現在、書斎と当時の原稿が「横溝正史館」として公開されている。
金田一耕助は『病院坂の首縊りの家』事件を解決後、アメリカに飛び姿を消して消息不明になっている。その後も、いくつかの作品が出版されているが、時系列ではこの事件が名探偵・金田一耕助最後の事件である。
敬称略