9月9日は作曲家『エリック・サティの処女作である「アレグロ」が発表された日』だ。
「音楽界の異端児」と呼ばれたエリック・サティが1884年の本日、ピアノ曲「アレグロ」を完成させた。
「音楽界の異端児」と呼ばれる一方で、作曲家としては「現代音楽のルーツ」とも称されるサティは、後世に多大な影響を及ぼした。同世代の音楽家である、ドビュッシーやラヴェルらも「現代の多くの作曲技法はサティによって決定づけられたものだ」と公言しているという。
パリ音楽院の学生時代は、学校始まって以来の怠惰な生徒という最低の評価だった。
優等生ではなく、落第生というレッテルを貼られていたサティは、その後、「音楽界の異端児」と呼ばれる所以を発揮する。サティは西洋音楽の常識だった調性音楽、いわゆるドレミファソラシドのあり方に問題意識を持っていた。
当時、入り浸っていた教会の影響もあり、自作に教会旋律を取り入れた。
教会旋律は、グレゴリオ聖歌に代表される、どこか厳かで不安定な印象を与える。不協和音が混ざっており、そう聞こえるのだ。サティは、それまでの伝統を無視し、タブーとされていた不協和音を取り入れ、既存の音楽の概念を壊した。
また、それまで意識的に聴く、鑑賞用として作られてきた音楽を、意識的に聴かれることのない、生活に溶け込む音楽として『家具の音楽』と称する曲を多数発表する。主役にならず、家具のように日常生活を妨げない音楽を作っていった。
「家具の音楽」で一番有名な曲は、1888年に発表した『ジムノペディ』と呼ばれる曲だ。タイトルを知っている人は少ないと思うが、聴いてみると「あ!知っている」と思う曲だ。それこそ、「家具の音楽」の真骨頂なのだ。気にせずとも聞こえてくる音楽である。
現代のBGMやヒーリングミュージックのルーツともいえるだろう。まさに、音楽が家の中に入ってくるきっかけにもなった。
敬称略