9月5日は写真家『ロバート・キャパが「崩れ落ちる兵士」を撮ったとされる日』だ。
現代ジャーナリズムの世界で最も有名な写真の一つである『崩れ落ちる兵士』は1936年の本日、撮られたとされている。
ロバート・キャパは本名ではない、本当はアンドレ・フリードマンという。
もともと、写真家としては鳴かず飛ばずだった。
転機は、生涯のパートナーとなる、同じ写真家のゲルダ・タローと出会ったことだ。
タローは、偉大な写真家「ロバート・キャパ」という架空の人物を創り出し、フリードマンがなりすまして、写真を売り込みに行ったという。
ライカ製のカメラを愛用していたキャパ (画像=Photos For Class)
その後、フランスの雑誌に1枚の写真が載る。
それが、『崩れ落ちる兵士』だ。スペイン内戦で銃を手にした兵士が凶弾に倒れた瞬間を写したものだ。
この写真が全世界で有名になり、フリードマンは正式にロバート・キャパと名乗ることになる。
当時、戦場の生臭い写真は珍しく、ここまで至近距離で撮ることは出来なかった。
世紀の傑作として20世紀を代表する写真となる。
しかし、長年にわたり、この写真の真贋についての論争が止まらない。
完成度が高すぎることや銃創が確認できないこと、また実際の戦場ではなく、別の場所で撮られたのではないかなど、様々な憶測が飛び交ったのだ。
最も有力なのは、訓練中に足元を滑らした兵士を撮影した、という説だ。
しかし、写真について何も語らないままキャパが亡くなったため、真偽のほどは分からない。
確かなのは「崩れ落ちる兵士」でチャンスを得たキャパは、その後にノルマンディー上陸作戦時の写真など、5つの戦争を取材し、数々の傑作を残したことだ。
キャパは、生涯独身であり、ホテルを転々とし、家を持とうとしなかったという。
ロンドンやパリなど、あちこちに定宿をつくり、そこを自宅代わりとした。
まさに「現場主義」を体現した写真家である。
キャパは、1954年にインドシナ戦争に従軍中、地雷に巻き込まれ命を落とす。
あまり知られていないが、戦場の悲惨さだけでなく、そんな状況でありながらも、笑顔で吹き飛ばそうとする人々の明るい姿を多く撮影している。
「崩れ落ちる兵士」に対する論争は続いているが、「現場主義」を貫き通したキャパに憧れる若き写真家たちは尽きない。
敬称略