8月28日は「ピアノ騒音殺人事件が起きた日」だ。
1974年の今日、神奈川県平塚市で残忍な事件が起きた。
ピアノの騒音を原因として母子3人が隣人に殺害されたのだ。
怪しげなピアノの旋律 (画像=写真AC)
事件は、ある県営団地で起きた。
ある日、犯人の階下に4人家族が引っ越してくる。
その家族には子どもがいたため、毎日騒々しく、犯人は、たびたび苦情を言っていたという。
そして、階下の長女がピアノを習い始める。それが、悲劇の引き金になった。
犯人は、毎日のように流れるピアノの音が気になり始める。
犯人は当時、失業しており、妻からは離婚話も浮上していた。苛立ちがつのる。
その後犯人は、階下の家族がわざと騒音を出しているのではないかと思いこみ、殺害を決意する。
8月28日の朝、階下の夫が出勤し、妻がゴミ出しに行くのを確認すると、犯人は部屋に侵入し、ピアノを弾いていた長女の胸を包丁で一刺しする。
続いて次女も殺害し、ゴミ出しから戻ってきた妻も殺害する。
犯人は、その場から逃げ出すが、後に自首する。
この犯人は、元々音に敏感で神経質な所があったという。
事件後の供述によると、神経質が行き過ぎて、ガラス戸の開閉音でさえ、爆発音のように聞こえたと言っている。
この事件がマスコミで大々的に取り上げられると、全国から騒音に悩む被害者が嘆願活動を行うなど波紋が広がる。さらに、同じような騒音による殺人事件も多発した。
高度経済成長期以降、急速に生活が豊かになる反面、今まで顕在化してこなかった騒音という新たな問題が浮上してきたのだ。これは、その象徴のような事件だ。
騒音以外にも、ゴミ問題や日照侵害など、高度経済成長期の光と影が顕著になってくるのが、70年代の日本である。
犯人は、裁判で死刑が確定したが、未だに死刑は執行されておらず、現在89歳の犯人は日本最高齢の死刑囚になっている。
騒音問題を浮き彫りにした本事件。
音が人を不快にさせ、時には殺人にまで発展すると、日本人の騒音に対する考え方を変えた。