8月18日は映画監督「ロマン・ポランスキーの誕生日」である。
『戦場のピアニスト』で知られる、ロマン・ポランスキーは1933年の本日、パリで生まれた。
ロマン・ポランスキー (画像=Photos For Class)
ポランスキーの幼少期は壮絶なものだった。
ユダヤ系の家庭で育ち、3歳の時にポーランドに引っ越す。
その後、第二次世界大戦が起こり、ナチスドイツによるユダヤ人迫害に直面した。
終戦後、大学で映画を学び、フランスで映画監督デビューする。
『チャイナタウン』や『テス』『戦場のピアニスト』といった世界で評価される映画を撮り続けている。
ポランスキーの作品には「アパート三部作」と呼ばれる映画がある。
その3番目の作品にあたる1976年に公開された『テナント/恐怖を借りた男』は、ポランスキー自身の不気味さが現わされている。
1964年に発表された「幻の下宿人」という小説を原作とした映画で、主人公はポランスキー自らが演じるトレルコフスキーという青年だ。
トレルコフスキーは前の住人が自殺未遂をし、入院中という物件を、持ち主が亡くなれば手に入る、という条件付きで契約する。
ほどなくして、その住人が亡くなり、男は正式な住人になる。
しかし、そのアパートの住人や管理人はどこか不気味な雰囲気を持ち、愛想もない。
そこから、前住人の瘴気に当てられたのか、隣人の視線や、アパートに一つしかないトイレからの視線を感じるようになり、精神が不安定になっていく。
時代背景は、原作が発表された1960年代だ。当時のパリは、急激な人口増加によって住宅不足に陥っていた。そのため、事故物件であっても家賃は600フラン、礼金が5000フラン、日本円に直すと家賃は約7万8000円、礼金は65万円と割高だったのだろう。
外観は、古い洋館の佇まいで、中心には長い螺旋階段が通る。
部屋の様子は、前住人がまだ生きていたため、荷物などは残っており、不気味さが増している。
サイコホラーというジャンルだが、直接的な怖さではなく、言いようもない不安定さが続く作品だ。
ポランスキー監督の作品全編において、悲しさや不気味さが通っている。
それは、幼少期に受けたユダヤ人迫害が影響しているのではないだろうか。
敬称略