8月10日は「宿の日」である。
全日本旅館連盟など宿泊観光4団体が日本の旅館の良さを再認識する日として、1992年に「や(8)ど(10)」の語呂合せで制定した。
宿の歴史は奈良時代まで遡る。
奈良時代の僧侶である行基が仏教寺院に造った布施屋が始まりだとされている。
律令制化の中で、租税や労役の運搬や出向を自分で行わないといけなかったので、都に着くまでに病や飢え死にする人が多かったためだ。
現在の、お金を払って泊まる、いわゆる宿になったのは、江戸時代の頃からだ。
木賃宿(きちんやど)と呼ばれる薪などの燃料代を支払い、食事は自炊を行う宿泊形態があった。
その後、全国各地に宿場町が形成され、宿の専門業者が現れていく。
今では、旅館業法によって宿泊形態も細かく分類されている。
「ホテル営業」「旅館営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」に分かれ、それぞれ様式や部屋数、常設する設備などが変わってくる。
趣のある旅館 (画像=写真AC)
ここ最近、この枠に入らない新たな宿泊形態が生まれている。「民泊」だ。
一般の戸建てやマンションで宿泊サービスを提供するものである。
これまで、法令上の決まりがなかったため、旅館業法のうち、簡易宿所営業の下、営業を行っていた。
去る6月9日、民泊に関連する法律である「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が成立した。
これにより、一定の法規制が定められ、ホスト側は、県に営業の届け出を出さなくてはならず、営業日数上限180日との制限も設けられた。
この法律が成立して以降、数々の企業が民泊事業に参入し始める。
楽天やみずほ銀行は、大手民泊事業主と提携し、物件の紹介や融資を行う予定だ。
しかし、良いことばかりではなく、まだまだ問題は山積みだ。
民泊ホストが室内に隠しカメラを仕掛けたり、性的暴行を行った疑いで逮捕されたりするなど、事業主のモラルが問題視されている。
それに伴い、京都府や千葉県では、条例で民泊に対する規制強化を行う方針だ。
日本経済新聞によると、民泊による経済効果は年間1兆円に及ぶという試算もある。
しかし、先述した問題を解決しない事には、上手く進んでいかないだろう。