7月6日は俵万智が歌った「サラダ記念日」です。

以前、電車で女子中学生に「教科書で見ました!まだ生きてたんですね!」と握手を求められたことがあるけど、ツイッターを始めて、似たようなことを、ちょいちょい言われる。うん、まだ生きてるよ~。

俵万智Twitterより 2012/03/17

と、歴史上の人物扱いされてしまうほど、歌人・俵万智の短歌はあっという間に世の中を席巻し、古典化した。

その作品の中でも最も有名なのがボーイフレンドとの日常を歌った下記の歌だ。

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日


何でも無い日でも、自分の作った料理を恋人が気に入ってくれたので忘れられない記念日になる。

この歌にある「サラダ記念」日を表題にした歌集が発売されると、恋する若者の心情を、普段着の言葉で歌った新鮮さが現代短歌界に衝撃を与えた。それだけでなく爆発的な売れ方をし、短歌を古典ではなく現在進行形の表現として一般の人々にも認識させるにいたった。当然、多くのフォロワーが生まれた。

社会現象を引き起こした20代中盤の現役高校教師をマスコミ各社は放っておかなかった。凄まじい数の取材攻勢、編集者からの面談依頼が押し寄せ、突然、自分の世界が変わってしまったことに俵は戸惑ったという。

通勤の電車まで記者に狙われるため、出版社によって高校までの送迎が手配された。さらにその移動中にまで取材をしたいと、ある新聞社の記者が乗り込んできて、自分にはわずか数十分の時間すらないのかと、涙がこぼれたという。

泣いている我に驚く我もいて恋は静かに終ろうとする

そんな怒濤の日々を経て、すっかり世の中が嫌になってしまった俵は表現から遠ざかる、かと思えば全くそんなことは無かった。

97年には歌集「チョコレート革命」を発表し話題になる。

テーマは爽やかな若者の恋愛から、妻子ある男性との不倫関係にかわった。

「愛は勝つ」と歌う青年 愛と愛が戦うときはどうなるのだろう

焼き肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き

私生活でも、未婚のまま出産、母となる。

仙台で子育てをするが、東日本大震災時に石垣島に移住。

子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え

の歌を発表し非難される。

しかし、先のTwitterのように俵からの発信は活発になっていく。人生に降りかかってくる何もかもを表現に変えていくしなやかさがあるのだ。

現在は息子とともに宮崎市に暮らすという。今年で歌集「サラダ記念日」が世に出て30年になる。

ただ君の部屋に音をたてたくてダイヤル回す木曜の午後

スマホ世代には理解できないかな。


敬称略

 
  • line
  • facebook
  • twitter
  • line
  • facebook
  • twitter

本サイトに掲載されているコンテンツ (記事・広告・デザイン等)に関する著作権は当社に帰属しており、他のホームページ・ブログ等に無断で転載・転用することを禁止します。引用する場合は、リンクを貼る等して当サイトからの引用であることを明らかにしてください。なお、当サイトへのリンクを貼ることは自由です。ご連絡の必要もありません。

このコラムニストのコラム

このコラムニストのコラム一覧へ