6月21日は、司馬遼太郎の時代小説「『竜馬がゆく』の連載が始まった」日だ。
「竜馬がゆく」は言わずと知れた坂本龍馬を描いた時代小説だ。
時代の先を読む力があり、抜群の行動力があるといった坂本龍馬のイメージは、この小説によって作られたといっても過言ではない。
司馬遼太郎作品「竜馬がゆく」「新聞記者 司馬遼太郎」 (画像=リビンマガジン編集部撮影)
この空前の人気作は、司馬の古巣である産経新聞夕刊で1962年のこの日に連載が始まった。
司馬遼太郎は記者時代の晩年から大阪市内の西区西長堀にある、西長堀アパートという公団住宅に住んでいた。
この西長堀アパートは、東京・晴海団地と共に都市型高層住宅の第1号である。
11階建て、全263戸の当時としては例の無い大型の集合住宅だった。現在の公団のイメージとは、大きくかけ離れた、高級アパートであった。
女優の森光子、南海ホークス時代の野村克也もこのアパートに住んでいたと言われている。
当然、家賃も高いものだった。
当時にして1万6500円、大卒初任給の1.4倍に相当する金額だった。
オフィスビルを思わせるモダンな外観に当時の大阪市民は憧れたという。
「竜馬がゆく」を始め、直木賞受賞の「梟の城」など、司馬遼太郎の名作はこの西長堀アパートで創作された。そういった意味でも、大阪の一時代を代表した建物だった。
過去形で書いてしまったが、このアパートは現在も現役で稼働中だ。
2005年に耐震基準の問題で、大規模改修工事が始まり、2016年の工事が終了後から新たな入居者が殺到したという。
URのHPで確認すると、6月20日現在も空室はない。
司馬遼太郎が坂本龍馬という人物に新たな命を吹き込んだように、西長堀アパートも装いを新たに復活したのである。
司馬遼太郎は、速読家として知られている。司馬が友人と話しているときに、その友人がコーヒー一杯飲み終わる前に、おしゃべりをしながら、司馬は文庫本ほどの厚さの書籍を読み終えてしまったという。
資料集めに、妥協しないことも有名だった。
敬称略