6月14日は作家の「椎名誠が生まれた」日である。
椎名は1944年生まれで、73歳になる今も人気作家として健筆をふるっている。
数多ある著書の中でも、1985年に出版された「岳物語」がつとに有名だろう。
自身の息子である岳の成長を描いたエッセイでベストセラーとなった。
わんぱくな息子の成長を見守る父親の姿に共感の声が多く、続編も出版され、息子に「岳」という名前を付ける親が続出したという。
しかし、当の本人は大きくなってから、自分のことをあれこれ書かれたことに、怒っていたという。
あれだけのベストセラーになると、自分のことを事細かに知っている人が日本中にいるわけで、確かに大変だろう。
この作品のように、椎名誠の作品は、家族がテーマになっているものが多い。
エッセイや小説以外にも、紀行文が有名だ。シベリアやオーストラリア、アマゾン、キリマンジャロといった過酷な環境の地域に何度も行っている。
海外に多く出向いているからこそ、自身の家づくりには、こだわりを持っているという。
インタビューでこう語っていた。
「(日本は)日当たりばかりが重視されていたけれど、僕は実地体験から風が大切なんだって知っていた。外国に行く機会が多いので、いろいろな国の家造りの工夫を見たりします。例えばバリ島の家なんか、石造りで頑丈にできているんだけれど、実に涼しい。」(日経ビジネスオンライン)
自身の家も風の通り道を一番に考えて建てたという。
バリ島の住宅 (画像=pixabay)
風通しの良さには、快適さだけでなく、家族との会話や意思疎通のしやすい暮らしを求めていたのだろう。
「岳物語」の影響で一時、息子との関係が良くなかったからこそ、そういった家づくりを考えたのではないだろうか。
息子は「岳物語」を発表した椎名誠と同じ年齢に達し、親になったことで、椎名を理解し、和解することができたと語っている。
世界中を旅した経験と家族との関係を住宅に置き換えた椎名誠だ。
椎名の家には自身の経験が詰まっているのではないだろうか。
敬称略