6月12日は「ナンシー関の命日」である。
ナンシー関は、消しゴム版画家として、著名人の似顔絵を彫った版画に加えて、テレビや社会への鋭い批評を繰り返していた。
その視点の独自性でテレビ批評において不動の地位を築いていたが、2002年の今日、心不全によって39歳という若さで亡くなった。100キロを優に超える肥満が原因だと考えられていた。
テレビ番組を網羅するために、家にはビデオデッキが4~5台あり、録画しながら複数の番組を見ていたという。
版画風テレビ
残された膨大な著作は、死後も多くのファンを獲得している。
芸能界にもファンは多く、松本人志や岡村隆史も自身のラジオ番組でナンシー関の死を悼んだ。
ナンシー関の多数あるテレビ批評の中で、「渡辺篤史の建もの探訪」にも辛口のコメントをしている。
建もの探訪は、俳優の渡辺篤史が、建築作品として評価できる住宅を紹介する番組である。
1989年(平成元年)から29年続く長寿番組で、住宅業界内の視聴率が高い番組として知られている。
ナンシー関は、この番組について、「ヨイショ合戦の王者」と評している。
毎週土曜日の午前に放送されており、この時間帯の番組は何に対しても「善意・好意」のみで接する、とナンシー関は話している。
その中で、渡辺がとにかく何でも褒めちぎり、何も批判しない。
この番組は、施主である一般人が細部までこだわった家が毎回登場する。
そのこだわりを渡辺が見抜いて褒めちぎるのだ。さぞ気持ちいいだろう。
渡辺のヨイショは行くところまで行き、飼っているペットにまでヨイショを発動させるのだ。
ばっさりと切りながらも、笑えてしまうユーモアにあふれている批評は現在でも有効だ。
ナンシーの辛口批評は、テレビが好きだからできるものだ。
岡村隆史のラジオでの発言を拝借するが、「テレビや社会をちゃんとした目で見る人がいなくなった」と痛感する。
我々が、テレビを見る力すらも失ってしまったのだとしたら、一体どれだけ多くのものを見逃しながら生きているのだろう。
あの自由な発言、批評をナンシーのコラムを読みながら、思い出す。