「生産緑地の2022年問題」は不動産業界にとどまらず、一般報道でも話題になっています。なかには「生産緑地の2022年問題」で、不動産価格が大暴落する!といった事実なら不動産ビジネスに大きな影響があるような報じ方をするメディアもあります。


いずれにせよ生産緑地の2022年問題を意識することは重要なことです。そこで、農地や生産緑地のコンサルティングをてがける、スマート・ホーム 小林悟代表に生産緑地の解説や事例を紹介していただきます。生産緑地の2022年問題を知り、生産緑地について一歩ずつ理解することで、生産緑地のプロフェッショナルに近づきましょう。


第6歩目は生産緑地ビジネスの失敗例を解説いただきました。(リビンマガジンBiz編集部)

(画像=写真AC)

今回は、皆さんの生産緑地知識をビジネスに活かせるように、生産緑地活用の失敗例について解説します。

【第4歩】提案の幅が広がる!生産緑地のままできる活用方法の種類【第5歩】生産緑地における面白い事業・サービスで解説したとおり、生産緑地のまま活用するには様々な方法があります。事前に各行政機関等(特に税務署)に相談の上、活用する場合には大きな失敗は起きにくいといえます。では、生産緑地活用の失敗はどんな場合に起こるのでしょうか。具体例をあげながら見ていきましょう。

生産緑地の活用に失敗した事例

生産緑地の活用には大きく分けて2種類あります。

一つ目は生産緑地のまま活用する方法。

二つ目は生産緑地を解除してから活用する方法です。

では、生産緑地を活用した際の失敗が多いのはどちらのケースでしょうか。実は、失敗例の多くが後者の生産緑地を解除してから活用するケースで起きています。

Aさんのケース

【5年前の状況】

所有不動産:自宅、生産緑地2,000㎡ 最寄駅からバスで15分の立地

生産緑地の時価:1億6,000万円

年齢:70歳

状況:地主は長期入院を経験し、体力の衰えを感じている。生産緑地は相続税納税猶予の特例の適用を受けていない。

何度も営業に来ていた建築会社から賃貸マンション経営の提案を受ける

【提案内容】

・生産緑地を全部解除して賃貸マンションを建てる

・間取りはワンルーム30室

・建築費用3億円

・銀行借入3億円

・自己資金なし

・家賃保証30年間 手取り年収450万円

・表面利回り6.5%

メリット

・農作業の必要が無くなる

・自己資金ゼロで賃貸マンションオーナーになれる

・30年間家賃保証のサブリース契約で安定収入確保 手取り年収450万円

・マイナス金利時代に6.5%の表面利回り 

・相続対策にも有効

デメリット

・銀行借入が3億円 30年間返済が必要

・息子が連帯保証人となる

・自宅にも共同担保設定

【Aさんの決断】

デメリットは気になるものの、30年間家賃保証が決め手となり賃貸マンションの建築を決定した。

【生産緑地の解除】

Aさんは長期入院経験があり、農業を継続することができない旨の医師の診断書により生産緑地の解除が認められた。

【賃貸マンション建築】

新築後ずっとシャッターが閉まっている部屋が多く入居者が少ない気がしたが、当初5年間は契約通り家賃保証の金額を受け取り何の問題もなかった。家賃保証してもらっていて正解だと思った。



キャッシュフロー

年間家賃保証1,944万円-銀行返済1,243万円-固定資産税251万円=手取り年収450万円

※固定資産税は4年目以降の金額

賃貸マンション新築時の不動産の評価

 


4億6,000万円-銀行借入3億円=純資産1億6,000万円

【現在の状況】

家賃保証金額見直しの件で建築会社から連絡が入る。入居率が悪いので家賃保証の金額を30%減額して欲しい。できない場合は家賃保証を打ち切ります。というショッキングな内容でした。

「30年間家賃保証のはずでは? これでは、生産緑地の活用に失敗したのかもしれない…」

契約書には30年間家賃保証と記載があるので、弁護士に相談したら大丈夫だとAさんは考えました。しかし、弁護士からは、家賃保証の契約書には、入居状況により家賃保証の金額を変更できる旨の記載があり、争っても勝てないと言われました。家賃保証が減額されると手取り年収が当初5年間のプラス450万円からマイナス123万円となるので減額要求を断りたいが、家賃保証が無くなると銀行への返済ができなくなる恐れがあります。Aさんは泣く泣く保証家賃の減額を受け入れました。

家賃保証金額見直し後のキャッシュフロー

年間家賃保証1360万円-銀行返済1243万円-固定資産税240万円

手取り年収マイナス123万円

毎年123万円のマイナスが今後25年間継続するとトータル3,075万円の赤字が発生します。もっと心配なのは、家賃保証金額が更に減額される可能性があることです。困ったAさんは知り合いの不動産業者に賃貸マンションを売却する際の査定を依頼しました。

【不動産会社の査定】

年間家賃保証1,360万円 表面利回り8%=1億7,000万円(収益還元法)

賃貸マンション建築後5年目の不動産の評価

1億7,000万円-銀行借入2億5,900万円=純資産マイナス8,900万円

賃貸マンション新築時に1億6,000万円あった純資産が、わずか5年後にマイナス8,900万円に!

何と2億4,900万円も資産価値が減少しました。

しかも銀行借入の残債があるので売るに売れない状態に…

>>続き:生産緑地活用の注意点を○×で紹介!



 
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