長くアパート経営をしていますと,どうしても建物が劣化し,それとともに家賃も下降線をたどります。
ハウスメーカー各社の提案書を見ますと,大よそ15年目以降は家賃が下落することが前提になっていますし,私のクライアントを見ていてもそのような傾向にあるようです。
そこで,古くなったアパートを取り壊して建て替えを検討する人も多いわけですが,今回はその取壊費用などの税務上の取扱いについてご説明します。
まず,取壊費用ですが,基本的には不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入できます。
ただし,取り壊した後に建築された建物が業務用でない場合(自宅や別邸など)には,その取壊費用は必要経費に算入できません。
次に,アパートの未償却残高は,取り壊しによって生じた資産損失として,その取り壊した年分の不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入できます。
ただし,そのアパートの貸付けが事業と称するに至らない規模で行われていた場合には,その資産損失の金額は不動産所得の金額を限度として必要経費に算入することとなり,不動産所得の金額を超える部分の金額を他の所得の金額と損益通算することはできません。
※資産損失を計上したら不動産所得が赤字になった
・事業的規模の場合 → 他の所得と損益通算が可能
・事業的規模でない場合 → 赤字部分は無いものとされ不動産所得は0円となる。故に損益通算できない。
ところで,不動産所得における事業的規模とは,いわゆる「5棟10室基準」で判断されることが多いですが,これは5棟10室以上であれば特に反証がない限り事業として行われていると判断する,という基準であって,5棟10室以上でなければ事業的規模ではないということではありません。
賃貸料の収入状況,貸付資産の管理状況等を総合勘案して判断します。