先日,相続対策をしたいというKさんと打合せをしていたときの会話です。
Kさん
現在,2棟の賃貸マンションを所有していますが,あと1年で借入の返済が終わるんです。
借入が無くなると相続税が高くなるんですよね?
また新たに借入をした方がいいでしょうか?
私
新規で物件を購入するという意味ですか?
Kさん
いえ,そうではなく,今の物件の担保価値の範囲内で借入だけしようかと。
今は不動産価格が高騰しすぎて手が出ないですよ。
私
借入だけしても相続税は安くなりませんよ。
Kさん
そうなんですか?
でも,借入をすれば相続税を計算するときに財産から控除できますよね?
不動産屋さんもそう言ってたし。
私
そうですが,借入をしただけでは相続税は安くならないんです。
例えば,相続財産が今のマンション2棟と現金1億円の場合,このマンションがそれぞれ2億円くらいだとしますと,今の相続財産は5億円ですよね。
ここに借入1億円しても,
マンション4億円+現金2億円-借入金1億円=5億円となり,
相続財産額に変化は無いんです。
借入をして,その金額で不動産を購入すると,不動産の相続税評価額は購入価額よりも低い場合がほとんどですから,この場合は相続税が安くなります。
例えば,1億円借入をして1億円の物件を購入した場合の,その物件の相続税評価額が5千万円だとしますと,
既存マンション4億円+既存現金1億円+新規マンション5千万円-借入金1億円=4.5億円
となり,相続財産額が減ります。
Kさん
そうなんですね。
では,借入をして不動産を購入した場合と,借入しないで現金で不動産を購入した場合とでは,やはり借入した場合の方が相続税は安くなりますよね?
私
いえ,安くなりません。
借入しても,現金で購入しても,相続税は同じです。
Kさん
え?
私
1億円の物件を借入して購入した場合は
既存マンション4億円+既存現金1億円+新規マンション5千万円-借入金1億円=4.5億円
となり,現金で購入した場合は,
既存マンション4億円+新規マンション5千万円=4.5億円
となって,同じなんです。
Kさん
そっかー。借入しても相続税は安くならないんですね。
私
一般的に不動産を購入する場合には借入をする人が多いですから,借入すると相続税が安くなると誤解する人が多いんだと思います。
借入をするだけではダメで,その借入金で不動産を購入して初めて相続税が安くなるんです。
とはいっても不動産なら何でもよいわけではなく,きちんと収益を生んで借入を返済できる物件かどうかが大事なんですけどね。
担保価値が高くて融資を引き出せ,且つ,きちんと収益を生む物件,それをどう見つけてくるかが相続対策の一番のポイントだと思いますよ。
Kさん
そうなんですね。
よくわかりました。