賃貸不動産を活用して相続税を節税するとはどういうことか,先月,弊事務所でお手伝いした事例をご紹介します。
港区在住の会社役員Aさん(58歳)
推定相続人は妻と子供2人の計3人
※対策前の所有財産の推定相続税評価額は以下の通り
現金預金 1億円
自社株式 8億円
金地金 1億円
賃貸不動産 3億円
銀行借入金 -6億円
合 計 7億円
2代目として引き継いだ会社の経営は順調そのものであり,それ自体はとても良いことですが,自社株評価額が8億円にもなっています。
先代が相続対策のために借入をして相続対策を行っていましたが,それでも想定相続税額は約1億1200万円です。
現金預金と金地金があるので納税資金に困ることはありませんが,納税額が大きすぎるので節税したいというご要望でした。
※推定相続税額の概算は以下の通り
相続税の課税価格 7億1472万円
遺産に係る基礎控除 4800万円
課税遺産総額 6億6672万円
相続税の総額 2億2402万円
配偶者の税額軽減 -1億1201万円
推定相続税額 1億1201万円
<購入した賃貸不動産の概要>
購入した物件の概要は以下の通りです。
渋谷区内の賃貸不動産
土地175㎡ 延床面積385㎡ 総戸数12戸(1K 5戸・1LDK 7戸)
物件価格4.5億円
融資金額4.5億円<35年ローン,年利0.52(10年固定)>
自己資金2500万円
年間家賃収入が約1900万円,元利均等の年間返済額が約1400万円です。
必要経費と所得住民税を控除しても毎年200万円程度はキャッシュが残る計算になります。
都心一等地の駅近・新築物件ですから空室率が恒常的に80%を切ることは考えられませんが,仮にそうなったとしても返済に窮する事態にはなりません。
これにより推定相続税額は約5,000万円となりました。
※対策後の推定相続税評価額は以下の通り
現金預金 1億円
自社株式 8億円
金地金 1億円
賃貸不動産 4億5000万円(新規購入物件の相続税評価額は1億5000万円)
銀行借入金 -10億5000万円
合 計 4億円
※対策後の推定相続税額の概算は以下の通り
相続税の課税価格 4億1722万円
遺産に係る基礎控除 4800万円
課税遺産総額 3億6922万円
相続税の総額 9822万円
配偶者の税額軽減 -4911万円
推定相続税額 4911万円
このように,賃貸不動産は相続税対策にかなり有効です。
しかし,賃貸不動産であれば何でもよいかと言えばそうではありませんので,以下にいくつかポイントを挙げておきます。
①購入価額と相続税評価額が乖離していること。
②事務所用よりも居住用
③ファミリー向けよりも単身者向け
④部屋は広くて少数よりも狭くて多数
弊事務所では,物件選定から金融機関交渉,購入後の運営サポート,そして税務申告まで,責任をもってお手伝いします。