実務では・・・
父が亡くなりました。相続人は母,息子,娘の3人です。
遺産は自宅と生命保険金と預金5,000万円です。
息子・娘はそれぞれ結婚して持ち家があるので,この自宅は自然の流れで母が相続します。
生命保険金の受取人も母なのでそのまま受け取ります。
預金はどうするか3人で話し合い,母が2人で分けなさいと言うので息子・娘が半分ずつ相続することにしました。
めでたしめでたし。
これは相続の現場で見られる一般的な光景です。
相続の現場では預金も当然に遺産分割協議の対象として誰もが考えます。
ところが,現在の法律では,実はこれは例外的取扱いです。
法律では・・・
「相続人数人ある場合において・・・可分債権あるときは・・・法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する・・・(最高裁1954.04.08判決)」
預金は可分債権です。
可分債権とは分けられる債権のことですから,上記判決は要するに,相続が発生した瞬間に自動的に法定相続分でバラバラに分割して当然と判断しているのです。
よって,預金は遺産分割協議の対象外だというのが最高裁の立場です。
実務からは程遠い考えです。
一般的に銀行は,預金が可分債権だからと相続人が主張して単独で引き出しをお願いしても応じてくれません。
法定相続人全員が実印を押印した遺産分割協議書と法定相続人全員の印鑑証明書を持参してやっと応じてくれます。
実務ではこちらが原則です。
今後は・・・
この預金の取り扱いが変わりそうです。
最高裁第一小法廷は,H28年3月23日,預金と遺産分割に関する審理案件を大法廷に回付しました。
大法廷での審理は,新たな憲法判断や判例変更をする場合に開かれることとされていますので,これまでの取扱いが変更される可能性が極めて高く,それが今後広範囲に相続実務に影響を与えることが予想されます。
やっと法律が実務に追い付きます。