ついにきたタワーマンション節税規制
平成28年10月25日の日経新聞朝刊に,
「政府・与党は20階建て以上の高層マンションについて,高層階の固定資産税と相続税を引き上げる。」
という記事が掲載されました。
行き過ぎたタワーマンションによる節税を規制しようというわけですが,タワーマンション節税の何が問題なのか,そして今回の政府・与党の対応が今後どのように影響するか,検討してみたいと思います。
タワーマンション節税のしくみ
ここ数年,注目されているタワーマンション節税(以下,主に相続税の節税を主眼におきます)ですが,そもそもタワーマンション節税とは,不動産の実際の取引価額と相続税評価額の開差を利用した方法であり,昔から頻繁に用いられている方法です。
タワーマンション最上階の1室を3億円で取得した場合において,その相続税評価額が6,000万円程度とすると,その差額分だけ相続税の課税対象(課税価格)が減少するので,結果として相続税の節税になるというわけです。
なぜこうなるかと言いますと,相続税を計算する場合における不動産評価の方法に起因します。
すなわち,マンションは土地の敷地持分と建物持分で構成されていますが,高層マンションほど1室当たりの敷地持分が少ないため,結果として評価額が低くなり,かつ,建物の固定資産税評価額が当該マンションの建築価額や市場価格よりも相対的に低く設定されているためです。
よって,タワーマンションの場合,1階と最上階の床面積が同じであれば,相続税評価額は理論上同じになります。
実際の取引価額は1階と最上階では倍以上の差があることもありますが,現行税制ではこの差は無視されます。
故に,タワーマンションによる相続税対策が,巷,推奨されているわけです。
政府与党の改正案
これを規制しようというのが今回の報道ですが,政府与党が検討している新しい評価のしくみは,高層マンションの中間の階は現行制度と同じ評価額にする一方,中間階よりも高層の階では評価額を段階的に引き上げ,低層の階では段階的に引き下げる,というものです。
新しい税制の対象は2018年以降に引き渡す新築物件に限定するとのことですが,この評価のしくみでは建物評価に対する一定の効果はあっても,土地評価に対する効果は限定的だといえそうです。
その理由ですが,相続税を計算する場合における建物評価額は総務省主管の固定資産税評価額を基に計算しますが,タワーマンションがあるような都市部の土地評価額は総務省主管の固定資産税評価額ではなく,財務省主管の路線価を基に計算します。
つまり,総務省だけが規制してもその効果は限定的となります。
当然,財務省(国税庁)も同時に規制を検討していることと思いますが,土地の評価を階数で一律に規定することは評価理論的には難しく,適当でありません。
よって,今回の報道が総務省の対応だけだったことには理由があり,土地評価の難しさを表しているといえそうです。
年末の税制改正大綱に注目したいと思います。