税理士・公認会計士の木下勇人です。名古屋で相続専門の税理士法人を主宰しております。
さて、今回も前回に引き続き弁護士先生との会話の中で出た相談内容を検証してみたいと思います。
今回は「贈与税の連帯納付義務」(後段:みなし贈与との関係)について。
前回は「贈与税の連帯納付義務」につき、事例の中で検証を行いましたが、
今回は、その続きで「みなし贈与」との関係を検証してみたい思います。
内容は前回からの続きですので、前回記事をご一読いただいてから
今回を読んで頂けますと幸いです。
■前回ケース要約
中小企業のとある社長が愛人(外国人)に1年で4,000万円貢いでしまった。
愛人の行方がわからず帰国の可能性あり。
本来、愛人が支払うべき贈与税(約1,740万円)を社長が支払わなければならない
贈与税の連帯納付義務(相続税法第34条第4項)の存在を知らされてしまう・・・
■以下続き
私(木下):
ちなみに、本来的には次の検討もしておくいいかもしれません。
今回のように、社長が連帯納付義務に基づいて贈与税(&延滞税)を支払ってしまうと、
社長から愛人に対する求償権が生じてしまいます。
この求償権を行使しなければ、それはそれで・・・
「みなし贈与」(相続税法第8条)の可能性が残ってしまいます。
(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
第八条 対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け又は第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合においては、当該債務の免除、引受け又は弁済があつた時において、当該債務の免除、引受け又は弁済による利益を受けた者が、当該債務の免除、引受け又は弁済に係る債務の金額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該債務の免除、引受け又は弁済をした者から贈与(当該債務の免除、引受け又は弁済が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該債務の免除、引受け又は弁済が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
一 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、当該債務の全部又は一部の免除を受けたとき。
二 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その債務者の扶養義務者によつて当該債務の全部又は一部の引受け又は弁済がなされたとき。
弁護士先生:
???
つまり・・・なんだ・・・
約1,740万円についても債務免除扱いにされて、贈与税が課されるってこと?
なんじゃそりゃあ・・・
だとしたら踏んだり蹴ったりじゃん・・・
私(木下):
そうなんですよ。
本当に踏んだり蹴ったりで・・・
溜まったもんじゃないんです・・・
仮に、翌年に求償権を放棄したとすると、贈与税が
(1,740万円 - 110万円)× 50% - 250万円 = 565万円
弁護士先生:
社長、絶対納得できないよ・・・
私(木下):
先生、一応救済措置がありますんで安心してください!
さっきの条文にそのまま書いてあります。
(再掲すると・・・青文字部分参照)
(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
第八条 対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け又は第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合においては、当該債務の免除、引受け又は弁済があつた時において、当該債務の免除、引受け又は弁済による利益を受けた者が、当該債務の免除、引受け又は弁済に係る債務の金額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該債務の免除、引受け又は弁済をした者から贈与(当該債務の免除、引受け又は弁済が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該債務の免除、引受け又は弁済が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
一 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、当該債務の全部又は一部の免除を受けたとき。
二 債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その債務者の扶養義務者によつて当該債務の全部又は一部の引受け又は弁済がなされたとき。
↓ つまり・・・
債務者(愛人)が資力を喪失して債務(贈与税)を弁済することが困難な場合には、
この限りでない(みなし贈与なし)となっています!
弁護士先生:
最悪ケースは免れてるけど、それでも酷い条文だね・・・
まさに鬼だよ・・・
私(木下):
本当に鬼だと思います。
課税庁側の徴税を優先させてのことでしょうけど、酷いですね・・・
でも、法治国家だから仕方ないんですよね。
現状では、声を大にして税制改正要望を出していくしか道はないんでしょうね・・・