税理士・公認会計士の木下勇人です。名古屋で相続専門の税理士法人を主宰しています。
今日は、少し前に弁護士先生と酒を飲みながら話してた内容をご紹介したいと思います!
弁護士先生:
この前、クライアントからの相談を受けてね。
「他人の土地の上に自分の家が建ってて22年ぐらい住み続けてるけど、土地は取得できるの?」
こんな内容の相談だったから、
「民法162条の取得時効があるから可能ですよ」
って回答したんだよね。
■解説
他人の土地を占有することにつき
善意無過失の時は「短期」に該当して10年間。
悪意若しくは善意・有過失の時は「長期」に該当して20年間。
「短期」の場合には、占有開始時に「善意無過失」を立証しなければならないので、
通常は「長期」で主張していくことが多いのではないかと思います。
また、当然のことながら占有しているだけで勝手に取得することができる訳ではなく、
「時効の援用(民法145条)」を行う必要があります。
私(木下):
先生。。。
その土地ってどこですか? ちなみに時価でいくらぐらいですか?
弁護士先生:
えっ。。。 もちろん東京都内だよ。。。
時価にして1億円ぐらいあるかも。
そのクライアント、なかなかラッキーでしょ!
私(木下):
先生。。。
そのクライアントさんに税金かかるって知ってますよね?
しかも結構かかりますけど。。。
弁護士先生:
えっ・・・
マジで・・・
何にも伝えてないよ・・・
いくらぐらいかかるの・・・
私(木下):
相手が「あげる」という意思表示をしていないので「贈与」税はかからないです。
でもタダで取得した訳で儲かっているので所得税・住民税(一時所得)がかかりますよ。
一時所得 =(土地の時価 - 必要経費 -50万円)
課税対象 = 一時所得 × 1/2
これに税率(所得税+住民税)がかかりますね。
↓ これを当てはめてみると・・・
一時所得 = 1億円 - 150万円(訴訟費用など)- 50万円 = 9,800万円
課税対象 = 9,800万円 × 1/2 = 4,900万円
税額 = 4,900万円 × 55%(復興税除く)= 2,695万円
↓ それに・・・
訴訟費用、司法書士報酬、登録免許税、不動産取得税なども必要になる。。。
結構お金かかりますよ。。。
弁護士先生:
え~~~~~~!!!!
どうやって払うの???
私(木下):
土地売るしかないですよね。。。
弁護士先生:
あっ! そうだ!
税金にも時効(除斥期間)があるって聞いたよ!
所得税は5年間らしいじゃない。
民法145条には時効援用すると遡及効があるから、
とっくに5年以上経過しているから当然時効になるよね?
私(木下):
先生。。。
よく考えられましたね。
でも・・・残念ながら、それも塞がれています。
国税庁HP(https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1493.htm)を
参照していただくとよくわかりますが、
時効の援用した年の所得税として課税されます。
裁判やって成立した年が翌年とか翌々年になっても、
援用した年の所得税として課税されます。
↓ ということで・・・
時効取得するのは裁判を起こせば可能ですが、その出口をよく考えて実行してくださいね。
これが税務の怖さという他ありませんね。