不可抗力の状況下における民法上の判断

地震や台風、落雷などは日本で生活する上では避けることができないうえに、いつ起こるかもわからないものですよね。もし自然災害が原因で引渡し目前のマイホームを失ってしまったり、壊れてしまったりした場合、どうしたらいいのでしょうか。民法上では「買主・売主の責任ではないところでモノの取引ができなくなってしまった場合(=不可抗力)、買主は代金を支払わなければならない」と解釈されます。しかし、例えば隣の家から出火し、売主宅まで延焼し全焼してしまったなどの場合、買主は自宅が手に入らないうえに、自宅の代金を支払わなければいけないという、泣きっ面に蜂の状態になってしまいますよね。仕方がないこととはいえ、こうなると売主側としてもなんとなくしこりが残ってしまいます…

危険負担の特約がつくと話が変わる

民法にただ則るのでは買主と売主が平等ではないということ、また不動産取引の現状にそぐわないということから、不動産売買に関しては不可抗力における損傷の場合について、あらかじめ契約時に「危険負担」に関する特約として条件をつけることが多いです。不可抗力時に売主と買主の「負担」の分担をどうするか決めておくのです。この特約の内容は「売主が物件を修理したうえで買主に引き渡すようにする」とされているのが一般的です。また、全壊や修理ができないくらいひどく壊れてしまっている場合などは、契約解除ができるといった内容が盛り込まれていることもあります。この特約がつくと売主側の負担が大きくなるように感じますよね。しかし、この特約があるからこそ買主が購入に踏み切れると考えれば、買ってもらう側の売主としても悪いことばかりではありません。危険負担についての売主側の対策としては、物件の引き渡しまでは火災保険や地震保険などの保険に加入し続けるしか手立てはありません。なお、これが買主の責任で「物件が滅失したり、損壊したりした」場合は、話が変わってきます。例えば買主が内覧中にボヤを出してしまったケースなどが一例としてあげられます。この場合は当然、売主に責任は無く、おおむね買主はただ代金を支払うことになります。

不動産売買はタイムラグがある取り引き

ローンの手続きや契約手続きが煩雑で時間が掛かりがちな不動産取引。それゆえ、売買契約成立後も実際に物件の引き渡しが行われるまでにタイムラグが生じてしまいます。売買契約が成立して、即引渡しというケースはあまりないことから、このような問題が生じてしまうのですね。売主側としてはなんとか無事に引渡しの日を迎えられることをいのるばかり…といったところでしょうか。

 
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