7月16日、アメリカ・ロサンゼルスの美術館で、展示作品を背にして観光客が「自撮り」をしようとしたところ、誤って倒れ込み台座が次々と転倒、複数の展示品が破損した事故があった。被害総額は2,200万円にも上った。しかし、故意ではなく事故だったことから美術館側は女性を訴える予定はない、とコメントしている。では、不動産の現場において、物件の内覧中に建物の設備を壊してしまったら、内覧者は弁償しなければいけないのだろうか。かやはら行政書士事務所 茅原真澄代表に聞いた。(リビンMagaZine編集部)
割れた茶碗 (画像=写真AC)
損害賠償を支払うか否かに関しては民法によって判断されます。
民法第709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と定められています。
つまり、「わざと(故意)又は、うっかり(過失)であっても他人に損害を与えた人は、損害を賠償する責任があります。」ということです。
不動産の内覧時に、建物や建物にある不動産会社の備品等を壊してしまった場合、弁償する責任は生じる、ということになります。加害者が未成年者の場合は、細かいルールはありますが、基本的に親権者に責任が生じます。
ただし、これは民法の問題ですので、強制的に「こうしなければならない」ということではありません。当事者同士が納得すれば、それが常識から大きく外れた内容ではない限り、法律と異なる結論を出すこともできます。
例えば、被害者がとても優しい方で、責任を問わずに許してくれることがあるかもしれません。また、加害者が責任を強く感じて実際の損害額以上の賠償をすることもあり得ます。
当事者なったときの対処法
もし、不幸なことに読者の皆様がこのような場面に遭遇し、被害者から損害賠償を請求された場合は、どうするべきでしょうか。
まず、当然のことですが、法律とは別に社会常識として、被害者に対して誠意をもって対応することが重要です。そして被害者が何を求めているか聞く必要があります。
被害者の要求を書面にしてもらった方が良いケースもあるかもしれません。
そして、被害者が損害賠償を請求する根拠としている、故意又は過失について注目してみましょう。
もし、この賠償請求に納得できないところがあった場合、どうするべきでしょうか。
まずは、被害者と誠意をもって話し合うことが重要です。原則として、加害者に故意または過失があったことを立証する責任は、被害者つまり損害賠償の請求権者にあります。
誠意をもって対応しても、被害者の主張に納得できない部分がある場合には、被害者の主張の根拠を求めましょう。
損害賠償の内容に納得できない場合は?
次は、損害賠償について注目してみましょう。例外もありますがほとんどの場合、損害賠償は金銭です。
被害者側の請求額が「いくら何でも高過ぎるのでは」と納得できない場合、これも同じく、被害者と誠意をもって話し合うことが重要です。こちらも原則として、損害賠償額の立証責任は被害者つまり損害賠償の請求権者にあります。誠意をもって対応しても、賠償額に納得できない部分がある場合には、賠償額の根拠を求めましょう。
不動産や建物などを見学するときは、まだ自分の家ではなく他人の持ち物であるとこと意識して行動した方が良いでしょう。小さいお子様がいらっしゃる場合は、そのことを十分言い聞かせ、注意して監督しましょう。
万が一、読者の皆様がこのような場面に遭遇してしまった場合には、先ずは誠意をもって当事者同士で話し合って解決を図るようにしてください。当事者同士での話し合いによる解決を目指す場合には、行政書士はお役に立つことができます。