不動産に関する訳あり物件とは、35条書面(重要事項説明書)に記載すべき広義の告知物件を指しますが明確な定義はありません。例えば、「自殺」「孤独死」「他殺」「事故」「火災」の心理的なものから「反社会的勢力」の事務所が近いとか、「再建築不可」「違法建築」等、人の死に関する個人的な見解では、誰かに看取られて亡くなった自然死以外は告知する義務があるのだと思います。

土地建物の瑕疵以外は「心理的瑕疵」と言いますが、図面等には「告知事項あり」と記載する場合が多いです。宅建業者には説明義務がありますので、顧客保護の観点から35条書面で知らされていたら契約しなかった。と思えるような事実を記載し説明しなければなりません。

過去の経験から売買をするマンションの別の部屋、又は共用部分で大きな事件等があった場合でも説明していました。顧客や買取業者から敬遠されたり、全く迷惑な話で共同住宅であるが故のリスクです。

特に収益物件の場合は、収支計画が大幅に狂う事もあります。過去に猟奇的な殺人事件のあった賃貸マンションでは退去が相次ぎ、全体の賃料の見直しを行い再募集をかけた例もあり、利回りが低下する訳ですから、売却価格に影響するのは必至です。

大きな事件ですと調べればネットニュースの記事が出てきます。また、大島てるに掲載されますと消すことはできません。掲載された物件所有者が掲載削除を求めた訴訟で原告の請求は棄却された判例がありますので、掲載されている限り通常相場での売却や賃貸は難しいでしょう。

心理的瑕疵物件の価格は、通常相場の30%から70%程度で流通され、自死、孤独死の発見が遅れ腐敗臭がひどい場合はスケルトンリフォーム、発見が早ければ表層のみのリフォームで告知したうえで転売したり賃貸されます。発見が遅れますと蛆が湧き、床一面に大量の蠅の死骸があり腐敗臭で呼吸すら困難を極め、査定時に匂いが移らない様に合羽を着て内見する程です。

また、腐敗液等が床下にまで達していた場合のリフォームは消臭作業も必要ですから、専門業者に依頼するのが無難で賃貸の場合、原状回復費用の請求先が無い、若しくは請求できない場合に備えて賃貸オーナー向けの保険もあります。

リフォームして売却又は原状回復して賃貸にする場合は、お祓いをしてもらった方が良いと思います。その様子を写真に撮り、買主さん借主さんに見せてあげれば、ある程度安心感は与えられると思います。

問題は成約事例としてレインズ登録された場合、マンションの場合は他の部屋も査定価格に影響を及ぼすか?取引事例比較法では平均値が下がる訳ですから、多少の影響は受けるのではないかと思います。例えば、同じ階、同じ専有面積の告知物件が相場の半値で成約事例として登録された後に、通常相場で売り出した場合、指値の幅や販売期間に影響を及ぼす可能性はあります。

媒介業者はレインズ利用規程に基づき成約登録をしなければなりません、成約報告義務の不履行は戒告(公表)処分となる可能性がありますので歓迎できない成約登録もあり得る訳です。

専有部分内での事であれば影響は少ないと思いますが、例えば共用部分、「エントランス」「廊下」「階段」「エレベーター」での事故、事件、又は「飛び降り」等があれば、全体の相場として影響がある可能性はあります。

専門的に扱っていた経験から、差支えない範囲で共用部に関する告知物件の買取事例及び情報収集案件の一部をご紹介しますと、共用階段での縊死、バルコニーや窓からの飛び降り、エレベーター内での殺人、もっと強烈な物件もありますが差し控えます。

なお、告知期間の明確なルールはなく、知っている限り説明するという事なのです。因みに、URでは告知して賃料の半額は1年のみで、次の入居者には告知せず賃料も通常に戻しますので、民間宅建業者との認識の違いについて不公平感は否めないところであります。

 
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