皆さんこんにちは。今回は少し専門的な話題ですが、相続税の関わる重要な知識として、「総則6項」を取り上げたいと思います。相続に関わる業者(税理士含め)でも知らないことが多いのが「総則6項」なのですが、相続の専門家ではとても重要視されている話題です。特に相続税に不安をお持ちの方には絶対に心得てほしい情報ですので、すでに知っている方には少し冗長かもしれませんが、相続税に全く詳しくない人でもわかりやすいように解説したいと思います。


 

総則6項とはなんぞや

 

相続税は固定資産税と同じように、資産の価値に基づいて課税される仕組みとなっています。「この土地は○○億円、この建物は○○千万円」といった具合にその資産の価値=価額を評価してから、「あなたの所有する資産は○○円ですので相続税は○○円です」という風に税額が決定されるわけです。

 

この資産の評価は「財産評価基本通達」という、国が定めた財産評価のルールに基づいて行うことが定められています。このルールは、財産の評価額に不平等が生じないように計算されることを目的としています。ちなみに、不動産の相続税の評価に大切とされている「路線価」はこの「財産評価基本通達」に書かれている評価の考え方なのです。

 

ところで皆さんは「総則6項」という言葉をご存知でしょうか?ニュースでもなかなか取り上げられない専門用語ですが、簡単に言えば資産に関わる税法のひとつです。正式には「財産評価基本通達 第一章 総則6項 (この通達の定めにより難い場合の評価)」と言います。この項目の内容は非常に短く

 

「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官に指示を受けて評価する。」

 

と書かれています。

 

 

「著しく不適当」という、条文の大きな意味

 

この短い条文である「総則6項」が、相続税の分野においてはとてつもなく重要な意味を持っているのですが、どうしてでしょうか?

 

先ほど申し上げた、財産の評価のルールとなる財産評価基本通達ですが、このルールの解釈と節税スキームの適用をめぐって税務訴訟がおこることがあります。即ちこの相続税対策がちゃんと財産評価のルールに則っているかをめぐって争われるわけです。

昨今話題となっているタワーマンション節税も、通達の解釈をめぐって税務訴訟になっており、平成23年の税務訴訟で否認されています。この記事を書いているのが平成29年ですから、実は6年も前からタワーマンションによる節税は認められないとされているわけです。なぜ税額が安くなるかはここでは省略しますが、財産評価のルールに基づいて計算すると本当に安い金額で評価されてしまうのです。

 

こうしたタワーマンション節税のようなルールの穴を突いたような節税スキームがごくまれに発生することがあります。しかし、国税側からすれば「公平な課税」が大原則な都合上、放置しておくわけにはいきません。そのようなイレギュラーの予防線としてあるのが「総則6項」です。国税側は法的裏づけの無い課税処分はできません。しかし、総則6項を財産評価のルールに明記していることで、あまりにも「不適当」な財産の評価を「行き過ぎた節税策」として、見直す対策をしているのです。

 

 

知らないと大きな代償を払う『情報』の価値

 

総則6項についてどれほど理解があるでしょうか?相続の当事者に関しては、業界のこうした細かい情報を入手することは困難ですが、問題は相続に関わる業界の大多数も、この「総則6項」について知らないままという現実があるという点です。「自称」フィナンシャルプランナーや金融業者が「総則6項」という重要な情報を知らない(あるいはビジネスの邪魔になる情報なので、意図的に隠している)まま節税スキームと称した、融資や商品の提案をすることがあります。その結果、相続税が払えなくなり本来守るはずの不動産を手放さないと納税できないといった事例が結構多いのです。しかし、不適当な財産評価を防ぐ総則6項という条文が財産評価のルールにしっかり明記されているのですから、知らなかったでは済まされないということになってしまいます。

 

相続をめぐる業界にはこのような実態がありますので、間違えて「行き過ぎた節税」スキームに手を出さないように、まずは相続について相談する相手はくれぐれも間違えないようにする必要があります。

大切な資産を、次代に守るために 

不動産オーナーがこうした『情報』を仕入れるためには、情報の仕入先がただのビジネス目的の営業なのかそうでないのか、または相続税に対する理解が深い相手か見極める必要があります。法的に危ない節税対策に足を踏み込んで課税処分を受けてしまうことがよくありますので、相続で時代に資産を承継したいと考えるならば、こうした資産防衛に関わる情報を仕入れることを怠らないようにしましょう。

 
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