皆さん、こんにちは!公認会計士・税理士・中小企業診断士の金井です!今年もはやいもので12月でございますが、年末をいかがお過ごしでしょうか。今回は第4回目のコラムになります!

 これまでの3回の連載では、相続・事業承継に際して、「相談する相手を選ぶこと」「相続対策と称した提案型営業に気をつけること」「相談相手の背後関係に気をつけること」をお伝えしました。このどれもが、「相続問題における、相談相手と情報をよく吟味してほしい」というメッセージをこめてます。

私も自分の講義や相談の中でこうしたお話をすることが多いのですが、残念ながら実際の相続・事業承継の業界は、銀行やハウスメーカーの提案型営業が持ってくる「相続対策の情報」を鵜呑みにしてしまう不動産オーナーが多いのが現状です。私の事務所に相談にいらっしゃるお客様も、相続対策をしているつもりが全く相続の問題解決になっておらず、不安を抱えている方がよくいらっしゃいます。なぜでしょう?


課題解決に結びつかない提案型営業があまりにも多すぎるワケ。

 こうした事情には必ず理由があるのです。相手の立場を理解することが自分の資産を守ることに繋がることは先月の連載でお話ししました。ここで相続業界に提案型営業が横行する理由をよく考えてみましょう。 

まず、相続の発生はいつどこで起こるかわかりません。最近の医療技術は非常に進歩してきており、近頃では人間は最大で120歳まで生きることができるとのことですが、永遠に生きることはありえないわけですから、生まれてから120年後には絶対に相続が発生するものと考えられます。いざ相続が発生したとなると、10ヶ月後までに申告書を提出しなければなりません。このような中で相続税の納税資金の額を頭の中に抱えるのですから、不動産オーナーの相続に対する不安は途轍もなく大きくなっているかと思います。こうした不安と格闘している状態で「相続対策の情報」が舞い込んできたら、「ようやく相続の不安から解消される」という気持ちになるのではないでしょうか。

相続への不安提案型営業の格好の標的になる。

 提案型営業をする側からすれば、不動産オーナーが相続の不安に追い込まれている状況を絶好の機会ととらえるわけです。相続問題を抱えている不動産オーナーからすれば、相続対策をのどから手が出るほど求めているので、提案型営業の格好の売り込み先になってしまいます。その結果、提供される偏った情報からアパートを建てて相続税を安くしましょう、銀行から融資を受けましょうといった、普段なら絶対やらない相続対策を実行してしまうという行動につながってしまうのです。

 こういった背景は、まだ相続が発生していない不動産オーナーも同様です。いつ発生するか分からない相続に対して不安と焦りを抱えた結果、全く中立でない情報を頼りにしてしまいがちです。提案型営業に頼ってしまう根本の原因は相続に対する漠然とした不安と言えます。

相続人にとっては相続後のことなどあまり想像したくないでしょうし、被相続人の側からしても、家族間で相続の話題を出しづらい面もあるでしょう。けれども「自分だけは提案型営業にだまされないぞ」と心がけたところで、何の対策もしないまま相続を迎えてしまったり、相続に対して漠然とした不安を抱えていては冷静かつ客観的な判断を下すことが難しいでしょう。結果として相続対策をする時間は限られているという焦りが間違った意思決定につながってしまいます。

また、こうした不安を抱えてしまっていると、「いつも付き合っている業者だから」「大きい会社だから」という信頼・安心感に頼ってしまいがちです。提案営業する側は、こうした心理状況を見越して売り込みをかけて来ますから、提案された相続対策のリスクやコストを全く気にしないまま、セールスするものに食いついてしまうのです。

焦ってからではもう遅い!!提案型営業に足元をすくわれない相続。

 相続をビジネスととらえる提案型営業が多いのはこうした事情があるからです。提案型営業は、しきりに相続税への不安を駆り立てたり、相談と称したビジネスへの誘導をすることで、自己の利益を得ているのです。提案型営業の特徴はセールスをする商品・サービスを持っていることですから、もし相続対策をするうえで相談する相手を決めるならば、相手の立場を「冷静に、客観的に判断して」選ぶことが肝要です。そのためには相談する相手や情報提供してくる相手について慎重になるだけでなく、自分が偏った情報提供に頼らなければならないように追い込まれないように、あらかじめ焦って対策せざるをえない状況に追い込まれる前から相続に向き合い、正しい意思決定をするための準備をすることが大切なのです。




 相続という問題には、遺産の大小こそ個人差がありますが、人間誰しも逃れられないものです。相続の不安から決して目を背けずに、問題を先送りにしない人が、先祖代々の遺産を次代に承継できるのです。

 
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