皆さん、こんにちは!公認会計士・税理士・中小企業診断士の金井です!今月から、コラムを書かせていただけることになり、今回は第1回になります!
今回のテーマは「表面利回り」です。不動産を売ったり買ったりする時に、良く「表面利回り○%」みたいな話が良く出ますよね。そもそも表面利回りって何なのでしょうか?
- 「表面利回り」とは、購入価額に対する1年間の家賃収入の割合
「表面利回り」とは、簡単に言うと、購入価額に対する1年間の家賃収入の割合です。例えば毎月6万円の家賃が入るワンルームマンションを買うとすると、年間では72万円の家賃収入がありますよね。このワンルームマンションを1,000万円で買ったとすると、表面利回りは「72万円÷1,000万円=7.2%」となります。
「表面利回り」と「預金利率」の比較って意味があるの?
良く、この「表面利回り」と「預金利率」を比較して「定期預金利息は0.01%なのに、この不動産の表面利回りは7.2%ですから、絶対にお得ですよ!」みたいな営業トークを耳にしますが、これってプロに言わせると全く誤った考え方なんです。なぜならば、収入だけを比べても全く意味が無いからです。大事なのは諸経費などの支出を含めて、最終的にいくらのお金が手許に残るかという「キャッシュフロー」なんです。確かに先ほどのワンルームマンションでは年間72万円の収入があるかもしれませんが、そこから固定資産税や管理費、支払利息の他、所得税や住民税、修繕費などを差し引くと半分も残らないこともあります。さらに借入をして買っていれば、そこからまた借入金の元金を返済していくということになると、実際は雀の涙程度しか残らないことも多いのです。
雀の涙でも残ればまだマシ?
しかもこのワンルームマンションの年間72万円の収入というのは意外と不安定なものです。というのは空室になってしまえば、家賃は1円も入ってきません。そこまで行かなくても建物は徐々に古くなっていくものですし、それに加えて周辺に新しいマンションやアパートが出来るなどすると、そちらにお客さんをとられて家賃も下がって行く可能性があります。これに対して諸経費や借入金の元金返済などは、固定支出と言って、収入に関係なくほとんど変わらないか、あるいは修繕費のように増加していくものもありまから、一歩間違うと、収入よりも支出の方が大きくなることも普通に考えられるのです。これに対して、預金利息は20%の税金が天引きされるだけですから、絶対にマイナスになることはありません!銀行預金は確かに儲からないかもしれませんが、リスクそのものがゼロに等しいんですね!
- 「提案型営業」から中立的な情報が得られることはない。
今の日本では不動産だけでなく、資産の有効活用や管理、相続・事業承継について、間違った情報や偏った情報ばかりが蔓延していると言われています。その背景は「提案型営業」が情報提供の中心になっているからです。「提案型営業」とは、何らかの商品やサービスの売込みのことで、例えばワンルームマンションを販売する業者であれば、買ってもらわなければ仕事になりませんから、買いたくなるような情報ばかりを提供してくるのは当たり前ですよね。先ほどの「表面利回りと預金利息を比較して、ワンルームマンションを買うように勧めてくる」などというのは典型例で「実際のキャッシュフローで見たら、雀の涙ですよ」なんていうことを言ったら、お客さんが逃げちゃいますから、そんなことは言うはずがありません。でも買う方にしてみたら、そう言った情報を事前に十分に頭に入れてから決めないと、こんなはずじゃなかったと後悔するくらいで済めば良いですが、実際は借金が返しきれなくて自己破産する人もたくさんいるんです。
このようにセールスする商品やサービスを持っていたら、絶対に中立的な情報提供はできませんので、「提案型営業」からは偏った情報しか手に入らないんです。