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行為計算否認規定を適用

そして税務調査が入りました。

原処分庁は本件一連の行為を容認した場合には、請求人の相続税の負担を不当に減少させる結果になるなどとして、相続税法64条1項(同族会社等の行為または計算の否認等)を適用したのです。

つまりこの被相続人とA社の賃貸用建物の売買取引は相続税を節税するために仕組まれた実態のないものであるから、その存在を認めないという趣旨の判断をしたのです。

これに対し請求人は、借入をして不動産を取得するという取引は一般的に行われているものであり、本件一連の行為によって相続税の負担が不当に減少したものではないとの主張をしました。

ここで大きなポイントは、確かに状況から見ると異常と言わざるを得ないものの、請求人は何一つルール違反をしていないということです。法的には確かに賃貸用建物の所有権は被相続人に移転していますし、代金を20年後一括返済の借入金とすることも違法ではありません。

また、賃貸用建物を財産評価基本通達に沿って淡々と相続税評価すれば、時価(相場)に比して2億5,000万円低くなるのも計算結果として出てきたものだから仕方ないとも言えます。もちろん「けしからん」と言いたくなる気持ちはわかります。しかしルール通りにやっているものを、税務当局は否定することができるのでしょうか?

結論は「できます」

税務当局は、このような「行き過ぎた節税策」を否認するために、様々な別のルールを用意しています。その一つがは上記の相続税法64条1項(同族会社等の行為または計算の否認等)です。簡単に言うとルール通りやっていても、税務署長が「不当」と判断すれば、それを「ちゃぶ台をひっくり返すように」否認しても構わないということが書かれているのです。本件はまさにこの行為計算否認規定が適用されたのです。

そして国税不服審判所は、本件一連の行為の目的は相続税の負担を減少させることにあったと指摘し、原処分庁の主張を全面的に認める裁決を下しました。

最近は、このような富裕層の「租税回避行為=行き過ぎた節税策」に対する税務調査については、国税当局はプロジェクトチームを作って極めて積極的に取り組んでいます。

ルール通りだから問題ないということには必ずしもならないということです。色々な人達が持ち込んでくる「うまそうなアイデア」に食いつくのではなく、公認会計士や税理士などの専門家に相談するなどして、慎重に検討するという姿勢が重要です。

 
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