こんにちは。弁護士の角地山です。
前回のコラムでは、賃貸借契約の終了原因について書きました。
今回のコラムでは、そのうち債務不履行による解除について、少し詳しく書きたいと思います。
債務不履行というのは、簡単にいうと契約違反です。
通常の契約であれば、契約違反があった場合には契約を解除することが出来ます。
しかし、賃貸借契約では、賃貸人・賃借人間の信頼関係を破壊するような契約違反でなければ契約を解除することは出来ません。些細な契約違反があっても、契約を解除することはできないのです。
なぜこのように契約を解除することが簡単ではないのかというと、賃貸借契約は、賃貸人と賃借人の信頼関係を基礎とする継続的契約であるところに特色があり、この信頼関係を破壊するような事情がない場合には契約関係を継続させるべきと考えられているからです。
債務不履行による解除の典型例は、賃料の不払いです。
では、1回でも賃料の支払いを怠った場合に、賃貸借契約の解除が認められるでしょうか?
答えは、認められません。
先程も述べましたが、賃貸借契約の解除ができるのは信頼関係を破壊するような契約違反があった場合に限られます。
では、どのくらいの賃料の不払いがあったときに、賃貸借契約の解除が認められるのでしょうか?
この点について、はっきりとした基準はありません。
判例でも、2か月分の賃料不払いで契約の解除が認められた事例もありますし、4か月分の賃料不払いがあっても契約の解除が認められなかった事例もあります。各事例によって事情が異なるので、結論が異なっています。
しかし、一般的には、3か月分程度の賃料不払いがあれば、契約の解除は認められると考えていいでしょう。
賃貸借契約を見ていると、1回でも賃料の支払いを怠ったときには賃貸人が契約を解除できるとする条項が入っているのをたまに見かけます。
しかし、上記で述べたように、そのような条項があったとしても、1回の賃料不払いで契約を解除することは認められませんので、注意が必要です。