こんにちは。弁護士の角地山です。
前回は、賃料の不増額特約や不減額特約の有効性について書きました。
これに関連して、最近、気になるニュースがありました。
アパートを建てた大家さんが、大手のサブリース会社との間で、家賃収入は10年間変わらないという特約を付けてサブリース契約を締結し、6年後にサブリース会社から賃料の減額を求められてやむなくこれに応じたにも関わらず、その後、大家さんが賃料の増額を求めてもサブリース会社が応じなかったため、大家さんがサブリース会社を訴えたというニュースでした。
サブリースというのは、大家さんが建てたアパートを不動産会社が一括して借り上げ、不動産会社は借りたアパートを入居者に転貸し、また、大家さんに対しては空室に関係なく一定の賃料を支払うという内容の契約です。
大家さんにとっては、入居者の管理をしなくてもよく、空室による収入減少のリスクを回避しながら、賃料収入を確保するメリットがあることから、現在ではサブリース契約が多く利用されています。
先程のニュースでは、このサブリース契約において「家賃収入は10年間変わらない」という賃料保証特約がありました。
この特約は、大家さん側からすれば賃料の不増額特約という意味を持っていますし、サブリース会社側からすれば賃料の不減額特約という意味を持ちます。
前回のコラムでは、不増額特約は有効、不減額特約は無効ということを書きました。
これを今回のニュースのサブリース契約に置き換えると、「家賃収入は10年間変わらない」という特約をしていても、サブリース会社からの賃料減額請求は許されるが、大家さんからの賃料増額請求は禁じられるという結論になります。
最高裁判所も、サブリース契約で賃料保証があるような場合でも、サブリース会社からの賃料減額請求権の行使は妨げられないとしています。
ただし、ここで注意したいのは、大家さんは、サブリース会社から賃料の減額を求められたしても、直ちにその賃料減額請求に応じる必要はないということです。
サブリース会社の賃料減額請求は、①土地建物に対する租税その他の負担の増減、②土地建物価格の上昇低下その他の経済事情の変動、③近傍同種の建物の賃料との比較などの事情を総合的に考慮し、賃料が不相当に高い場合に認められます。
ですから、大家さんは、サブリース会社から賃料の減額を求められたしても、賃料が不相当に高いと判断されない場合には、それに応じる必要はなく拒否すればいいのです。
先程のニュースでも、大家さんはサブリース会社からの賃料減額請求に応じてしまっていましたが、もしかしたら本当は応じる必要のないものだったかもしれませんね。