年の瀬も迫りつつありますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
弁護士の角地山です。
これまでのコラムでは、普通建物賃貸借と定期建物賃貸借がどういうものかを説明してきました。
その説明の中でもお伝えしているように借地借家法は賃借人を厚く保護しています。
しかしながら、賃貸人は自己に有利なように賃貸借契約書を作成しがちです。
そのため、賃貸借契約書には、法律上無効であるにもかかわらず賃貸人に有利な条項が設けられて、それが元でトラブルになっている事案をよく見かけます。
そこで、今回は、普通建物賃貸借の契約書の内容でありがちな落とし穴について述べていきたいと思います。
まず、普通建物賃貸借契約において、賃貸期間の中でも賃貸人の一方的な解約申し入れによって契約を終了させることができるという中途解約条項が設けられていることがあります。
しかし、そのような中途解約条項によって、賃貸人が契約を終了させることはできません。
なぜなら、借地借家法28条では賃貸人からの解約申し入れは正当事由が必要とされており、同法30条ではこれに反する約定は無効とされているからです。
なお、これに対し、賃借人からの中途解約は特約があればできます。
次に、普通建物賃貸借契約において、賃貸期間の満了とともに、賃貸借契約が確定的に終了し、賃借人は建物を明け渡さなければならないとの条項が設けられていることがあります。
しかし、そのような条項は無効です。
なぜなら、普通建物賃貸借では更新されるのが原則とされ、借地借家法28条では更新を拒絶するには賃貸人に正当な事由が要求されており、賃貸期間の満了とともに契約が確定的に終了するというのはこの原則に反しているからです。そもそも、賃貸人が賃貸期間の満了とともに契約を確定的に終了させたいのであれば、定期建物賃貸借契約を締結すればよいのです。
以上のように、賃貸人にとって有利な契約書を作成したとしても、必ずしもその契約書の条項が法律上有効になるわけではありません。無効であるはずの条項を有効と信じて行動をしていると、後で賃借人から手痛いしっぺ返しを食らうこともあり得ます。
賃貸人としては、自らが使用している賃貸借契約書について改めてその有効性を見直してみるのも宜しいのではないでしょうか。
それでは、来年も素晴らしい年でありますように。