前回は、普通建物賃貸借の更新拒絶について書きました。
今回は、更新が予定されている普通建物賃貸借とは反対に、更新が予定されていない定期建物賃貸借について書きたいと思います。
定期建物賃貸借は、賃貸期間の満了とともに契約が確定的に終了する賃貸借契約です。
更新が予定されていないということは、賃借人にとって不利益をもたらす可能性があります。そのため、借地借家法では、定期建物賃貸借をするためには厳格な要件を用意し,この要件全てを満たさなければならないとしています。
定期建物賃貸借が成立するための要件は、次の四つになります。
① 書面による契約であること
② 期間の定めがあること
③ 契約書で更新がないことが合意されていること
④ 契約書とは別個の書面で更新がないことを説明されていること
【①書面による契約であること】
普通建物賃貸借では、口頭合意のみでも契約は成立します。
これに対して、定期建物賃貸借では、必ず書面で契約しなければなりません。
借地借家法では、書面による契約の一例として公正証書による契約を挙げていますが、なにも公正証書で契約書を作成する必要はなく、公正証書以外の書面で契約することも可能です。
定期建物賃貸借をするつもりで書面によらずに契約した場合には、定期建物賃貸借は成立せず、普通建物賃貸借として扱われます。
【②期間の定めがあること】
普通建物賃貸借では、期間の定めのない契約も認められています。
これに対し、定期建物賃貸借では、期間の定めが必要です。
【③契約書で更新がないことが合意されていること】
契約書面上、契約の更新がないことが一義的に明示されていることが必要となります。
この点、契約書面上に契約更新に関する条項が存在するなどして、契約の更新がないことが一義的に明示されていない場合には、普通建物賃貸借として扱われてしまいます。
【④契約書とは別個の書面で更新がないことを説明されていること】
賃貸人は、賃借人に対し、契約前に、更新がなく期間満了により契約が終了することを説明しておかなければなりません。
そして、この事前説明には書面の交付が必要であり、契約書とは別個独立の書面が交付されることが必要とされています。
もし、契約書とは別個独立の書面での更新がない旨の説明がなかったということになれば、普通建物賃貸借が成立するだけです。
以上のように、定期建物賃貸借には厳格な要件が設けられており、要件を一つでも満たさない場合には普通建物賃貸借が成立することになります。
定期建物賃貸借を考えられている家主さんは、上記のような点に注意をして契約をして下さい。また、既に定期建物賃貸借として貸している家主さんは、ちゃんと要件を満たしているのか改めて確認してみると良いかもしれませんね。