【問32】不動産仕入れ営業の基本的な考え方に関する問題|
不動産仕入れ営業(媒介受託)確認テスト

「売り物件の仕入れ」は、不動産売買仲介業には必要不可欠な業務です。しかし、この「仕入れ」業務をセンスや根性に頼らず論理的に考えたことがある人は多くはありませんでした。そこで、この連載では、不動産仕入れ理論の第一人者である不動産会社専門コンサルタントの梶本幸治さんと一緒に、仕入れを「理論」として学んでいきます。不動産仕入れについて必要な知識をクイズ形式で問います。よくわかる解説付きです。第32回は、あなたのこころに問いかけます。(リビンマガジンBiz編集部)

画像=Pixta

【問32】

不動産仕入れ(媒介・買取)営業を行うに際し、その基本的な考え方(スタンス・心得)に関して、誤っているものは次の内どれか

1. 不動産仕入れ営業は買付営業(販売営業)よりも高度な専門知識や交渉力が必要となる。従って、先ずは1~3年程度の買付営業を経験し、不動産営業担当者としての知見を充分に深めた上で、不動産仕入れ営業を担当する事が望ましい。

2. 売主様の売却理由は深く深く確認する必要がある。営業担当者の中には「資産処分」や「住み替え」といった表層の売却理由をヒアリングしただけで満足している者もいるが、この程度のヒアリングでは媒介受託はおぼつかない。

3. 売り出し価格は売主様の希望価格(言い値)を尊重すべきである、売却理由確認後、早期現金化の必要が無い場合は、相場より相当高値であったとしても、その価格を先ずは受け入れるべきである。

4. 仕入営業の集客に際しては、不動産一括査定サイト・ダイレクトメール・売り求むチラシ・業者間ネットワーク等、多種多様な仕入れルートを確保すべきである。限られたルートのみで仕入れを行っていては、業績が安定しない恐れがある。

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【正解肢】1

【解説】

1.(誤)不動産業界では長らく、本肢記述にように買付営業で修業を積んだのち、仕入れ営業に移行するものだと考えられてきた。しかし、購入希望者の要望はまさに十人十色であり、新人営業担当者がこれらを的確に把握する事は難しい。その点、売主様の要望は「高く売りたい」とうい一点において共通しており、新人営業担当者でも比較的容易に折衝が可能である。

又、ひと昔前なら「売却相談」自体の件数が少なく、その貴重な売却相談を経験の浅い営業担当に振り分ける余裕がなかった。しかし、一括査定サイトが普及した現在、売却相談を獲得する事は容易となり、新人営業に担当させる余裕も出てきた。

尚、本肢記述にあるように「買付営業よりも高度な専門知識や交渉力が必要」という側面もあるものの、これらは営業教育で充分にカバー出来る為、必ずしも実務経験が必要とは思えない。

これらの理由により筆者(梶本)は、買付営業よりも仕入れ営業を先に経験すべきであるのと立場を取る。従って本肢記述は誤りであり、本肢は本問の正解肢となる。

2.(正)売主様の売却理由ヒアリングと、残債の抹消が可能か否かのヒアリングは、不動産仕入れ営業において最も重要と考える。尚、本肢記述にある「資産処分」であるが、不動産売却はすべからく資産処分である。何故不動産を売却するのですかとの問いに対し、資産処分と答えることは、何故骨折したのですかとの問いに対し、骨が折れたからですと答えるのと同じである。単に言い方を変えただけである事に、全く気付いていない営業担当者が多すぎる。

3.(正)40歳以上の不動産プレイヤーなら「売れないような価格なら、媒介を断ってこい!」と上司からアドバイス(叱責?)された経験がある筈である。しかし、不動産一括査定サイトが普及した今、「三ヶ月以内に必ず売れる価格」での受託に拘っては媒介を獲得する事は難しい。よって、売り出し価格は売主様の希望価格(言い値)を尊重すべきと考える。

しかし、売主様の売却理由により早期現金化の必要がある場合はこの限りでは無い。尚、売主希望価格で販売を開始する際も、現実的な価格(査定価格)はしっかりと提示し、売主様に「高値で売りに出している」旨、認識頂く事を忘れてはならない。

4.(正)本肢記述の通り。

【参考記事】

「高値で媒介受託するくらいなら断れ」で損してる!?(2017年11月15日公開)

営業目標数字の根拠は「売り」から立てよう(2018年02月28日公開)

売却理由は資産処分です。そんな回答で満足する気ですか?(2019年09月11日公開)

月に専任媒介1.5件、一般媒介1件獲得する為の行動目標(2020年07月08日公開)

※本不動産仕入れ営業(媒介受託)確認テストは、執筆者である梶本幸治のコンサル経験・実務経験に基づいた不動産仕入れ理論で作成しております。本確認テストの正解肢以外の考え方や手法を否定するものではございません。

 
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