【問8】「売る気は無いが価格を知りたかった」と言われた時の対応に関する問題|不動産仕入れ営業(媒介受託)確認テスト
「売り物件の仕入れ」は、不動産売買仲介業には必要不可欠な業務です。しかし、この「仕入れ」業務をセンスや根性に頼らず論理的に考えたことがある人は多くはありませんでした。そこで、この連載では、不動産仕入れ理論の第一人者である不動産会社専門コンサルタントの梶本幸治さんと一緒に、仕入れを「理論」として学んでいきます。不動産仕入れについて必要な知識をクイズ形式で問います。よくわかる解説付きです。第8回の今回は、「売る気がない…」というお客様への対処法です。(リビンマガジンBiz編集部)
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【問】不動産一括査定サイトから問い合わせて来られた査定希望のお客様は、「売る気は無いが価格を知りたかった」とおっしゃるケースが多い。このように言われた場合、不動産営業担当の対応として正しいものはどれか。
1. 売る気は無いが価格を知りたいという事は、「不動産の価格」では無く「不動産の価値」を知りたい可能性がある為、知り合いの不動産鑑定士を紹介して差し上げる。
2. 売る気は無いとおっしゃる以上、不動産営業担当としてご提案する事は無い。このようなお客様に応対すること自体が時間の無駄であるため、次のお客様への提案に移るようにする。
3. 「ご自身の不動産の価格を把握しておかれる事は大切な事です。適正な査定価格を算出する為にも、是非一度物件を拝見させて下さい」等とご提案し、何とか売主様にお目にかかれるようにする。
4. 「何故、売却の予定が無いにも関わらず価格をお知りになりたいのですか?高値だったら売るのでしょ?」等とお尋ねし、売主様の本音に近づけるようにする。
【正解肢】4
【解説】
1.(誤)「売る気は無いが価格を知りたかった」とおっしゃる不動産所有者様が不動産の「価格」では無く不動産の「価値」を知りたい可能性は充分にある。そのような場合は本来、我々宅建業者では無く、不動産鑑定士に依頼すべきところであるため、一見すると本肢は正しいように思える。しかし、このような不動産所有者様は「タダ」で価格(価値)が知りたいだけで、有料の不動産鑑定士に頼むつもりはサラサラ無い。従って、知り合いの不動産鑑定士を紹介して差し上げる必要もない。
2.(誤)「お客様が売らないとおっしゃるなら、売却は検討されていないのだな」と素直に信じる性格は人間として魅力的なのかも知れない。しかし、そのような性格は営業担当者としては要注意。お客様の言葉の裏側にある、本音に辿り着くことが営業担当者の仕事である。よって本肢の記述は誤り。
3.(誤)このように応対する営業担当者は多い。「ご自身の不動産の価格を把握しておかれる事は大切な事」との提案も間違っているとまでは言えない。しかし「適正な査定価格を算出する為に」という部分は誤りである、不動産所有者様が知りたいことは高値売却の方法と可能性であり、適正な査定価格などでは無い。本肢は半ば以降の記述が明らかに間違っている。
4.(正)前肢解説でも述べた通り、不動産所有者の関心は「高値売却の方法と可能性」である。その本音を引き出す為に「高値だったら売るのでしょ?」と尋ねる事は非常に効果的である。従って本肢の記述は正しく、本問の正解肢である。
※詳細は下記「不動産一括査定サイト反響顧客の「売る気は無いが、価格を知りたかった」って本当?」の記事を参照。
【参考記事】
・不動産一括査定サイト反響顧客の「売る気は無いが、価格を知りたかった」って本当?(2019年10月09日公開) ・「高値で媒介受託するくらいなら断れ」で損してる!?(2017年11月15日公開)※本不動産仕入れ営業(媒介受託)確認テストは、執筆者である梶本幸治のコンサル経験・実務経験に基づいた不動産仕入れ理論で作成しております。本確認テストの正解肢以外の考え方や手法を否定するものではございません。