「売却理由は資産処分です。」そんな回答で満足する気ですか?

「売り物件の仕入れ」は、不動産売買仲介業には必要不可欠な業務です。

しかし、この「仕入れ」業務をセンスや根性に頼らず論理的に考えたことがある人は多くはありませんでした。そこで、この連載では、不動産仕入れ理論の第一人者である不動産会社専門コンサルタントの梶本幸治さんと一緒に、仕入れを「理論」として学んでいきます。

なぜ売るのか?納得するまで質問を続けましょう。(リビンマガジンBiz編集部)

写真AC

こんにちは。株式会社レコの梶本幸治です。

今回のコラムでは、売り主様に対する売却理由のヒアリングについて取り上げてみたいと思います。

私はクライアント先の営業会議に出席し、各案件の進捗状況を確認して指導させて頂く事も多いのですが、仕入れに関する営業会議では売り主様の「売却理由」を営業担当者様に尋ねています。

私が「この売り主様の売却理由は何ですか?」と尋ねた時…

「相続です。」

「離婚です。」

「住み替えです。」

「資産処分です。」

としか答えられない方の多くは、営業成績が伸び悩んでおられるように感じます。

売り主様へのヒアリングが不十分であることが、厳しい営業成績が続く原因かも知れません。

特に、「資産処分」なんて売却理由を聞いて満足していては困ります

不動産の売却は全て「資産処分」に該当するのですから、もっと深くヒアリングする必要があります。

勿論、資産処分以外の売却理由でも、もっと深くヒアリングする事が重要です。

例えば、相続が売却理由の場合でも、次のようなステージに分類出来ますよね。

①名義人は健在だか高齢で、事前に相談したい。

②相続は発生したが、遺産分割協議は未了。

③相続人や相続分は確定したが、相続登記未了。

④相続登記も完了し、早々に売却したい。

⑤相続登記も完了し、じっくり高値で売りたい。

「①」の場合なら案件化する事はまだまだ先でしょうし、「②」や「③」の場合なら、自社で使っている司法書士を紹介し、相続登記完了後すぐの案件化を狙いたいところです。

「④」なら買い取りを含めた提案が必要になりますし、「⑤」なら相場よりかなり高めの販売価格でチャレンジしてみることも売り主様の利益に繋がります。

売却理由の如何によっては販売期間、販売価格、販売手法等が全く異なります。

売り急ぐ必要のない売り主様と、売り急いでおられる売主様ではご要望が異なる訳ですから、我々不動産会社サイドとしては、そのご要望に応えられる提案を行うべきです。

先程、売却理由を答えられない方の多くは、営業成績が伸び悩んでおられるように感じますと申しましたが、売り主様の売却理由すらも明確に把握出来ない営業担当者に、的確な販売計画の立案など出来る訳もなく、売り主様のご要望に応えられる事もないでしょう。

その結果として、営業成績が伸び悩んでしまう事は、当然の帰結と言えるでしょう。

次のページ:売却理由を正確に把握できないと、とるべき手段を間違える

 
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