元不動産営業マン梶本の、結果を残す営業術
一般メディアへの寄稿も増えてきた不動産会社専門コンサルタント 梶本幸治さんが、デキる営業の心得、成功している不動産会社の特徴を紹介します。
今回はいきなりの問(とい)から始まります。心穏やかに回答をお願いいたします。(リビンマガジンBiz編集部)
(画像=写真AC)
【問】
高値売却を希望されている売主がいらっしゃいます。売主は査定書の提出を求めています。
あなたはこの売主に対し今週末、査定書を持参して売却のご提案を行うことになっています。そして、本案件は他社と競合しており、他社もこれから順次、売主に対し査定書を示したうえで売却提案を行うものと思われます。査定価格を提案する姿勢として、適当なものは次のうちどれか?
(1) 競合が見込まれるため、査定負けしないよう相場よりも高めの査定価格で査定書を提出する。
(2) 競合があろうと無かろうと、相場の査定価格で査定書を提出する。
(3) 後々、残ってしまう査定書はあえて提出せず、口頭による査定価格の報告を行う。
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【答】
(2) 競合があろうと無かろうと、相場の査定価格で査定書を提出する。
【解説】
(1) 競合が見込まれるため、査定負けしないよう相場よりも高めの査定価格で査定書を提出する。
1を選ばれたあなたは、売主への査定報告のみならず、不動産営業そのものに対する理解が決定的に不足しています。猛省をうながします。
受託したいがために査定価格を相場以上に設定した場合、受託には成功するかもしれません。しかし、高値のまま成約しない状態が続く可能性が高く、大幅な価格交渉が入った場合も、「あなたの査定価格より低いですね。この商談は断って下さい」と売主に言われてしまうと、何も反論できなくなります。
相場よりも高めの査定価格を提案することは、自らの首を絞めるのと同じ行為です。
(2) 競合があろうと無かろうと、相場の査定価格で査定書を提出する。
2を選ばれたあなたは、受託後の事も考えつつ俯瞰的に仕入れ営業を捉える事ができています。お見事です。どんなに獲りたい物件でも、どんなに頑固な売主でも、査定価格をイジル事は自殺行為です。今後も、このように毅然とした態度で売主への提案に臨んで下さい。
(3) 後々、残ってしまう査定書はあえて提出せず、口頭による査定価格の報告を行う。
3を選ばれたあなたは、次の2パターンのどちらかに該当するのではないですか?
1つ目は「自他ともに認めるスーパー営業担当」。2つ目は「何も考えず、行き当たりばったりの営業担当」。
もしも、あなたがスーパー営業担当で「3」を選択されたなら、間違いではございません。凡人には無い営業力・交渉力を持つあなたなら、査定書などなくても相場感のある価格で受託が可能でしょう。
しかし、スーパー営業担当では無い方が「3」を選択されたなら、不動産営業に関わらず全ての営業職に不向きです。転職をお勧めします。売主が査定書の提出を求めているにも関わらず、意味不明な理由により査定書を用意しない営業担当が、売主の信頼を得ることは不可能です。
上記の問題、あなたは正解できましたか?
「売主に気に入られたいから」、「他社に査定負けしたくないから」といった理由で、査定価格に手心を加えることは、まさに営業の自殺行為です。
もしも受託できたとしても、その後、成約する可能性は限りなく0%に近いでしょう。
しかし、「査定価格は査定価格として提案するが、一生懸命頑張って1万円でも高く売却できるよう努力したいと考えており、この気持ちを査定書にも反映したい」場合はどうすれば良いのでしょう?