毎週水曜日配信、「元不動産営業マン梶本の、結果を残す営業術」
業界歴21年、不動産会社専門コンサルタント 梶本幸治さんが、デキる営業の心得、成功している不動産会社の特徴を紹介します。
「高値で媒介受託するくらいなら断れ」は、不動産の営業にはお馴染みのフレーズです。しかし、本当に正しいのでしょうか?(リビンマガジンBiz編集部)
(画像=写真AC)
あなたが20~30代半ばの不動産営業なら、上司からこんなことを言われた経験があるのではないでしょうか?
「媒介は売れる値段で受けてこい!高すぎて売れないような値段で預かるくらいなら、こちらの方から断ってこい!断るのも営業の仕事だ!」
私も若い頃はこんな風な指導を受けたものです。もし、あなたの上司が私と同年代(私は昭和48生まれの44歳)なら、自分自身が若い時に言われた通り、あなたを指導しているかもしれませんね。
私自身、不動産会社向けのコンサルタントを始めたての頃は、クライアント先の営業担当者に対して「売れない価格で受託するくらいなら、断ってきてください」と指導していました。当時は当たり前のことを言っているつもりでした。しかし、そのような指導を受けた担当者は全然結果を出せませんでした。
なぜなら、この考えは間違いだからです。
媒介の受託は「売主様の言い値」で受けてOKです。
今回は、その理由についてご説明いたします。
確かに昔は「売れない価格で受託するくらいなら断る」という判断は正しいものでした。売主様はできるだけ高く売りたいと考えているものです。当然あらぬ勘違い価格を希望する人もいました。そういった方に、現実の価格でいかに納得いただくかが勝負だったのです。
では、なぜ今の営業現場においては、売主様の言い値で受けてOKなのでしょうか?理由としては次のような点が挙げられます。
・インターネット情報を「素人判断」で解釈し、プロのアドバイスを軽視する売主様が増えた(よりプロの意見に聞く耳を持たなくなった)。
・一括査定サイトの普及に伴い、不動産会社とじっくり向き合ってくれる売主様が減った。
・相場の上昇などにより売主様の言い値で売れるケースが出てきた。
つまり、このまま「売れない価格で受託するくらいなら断る」という姿勢を貫いてしまうと、受託する機会損失につながってしまうのです。
しかし、売れるが見込みがないほど高値で受託しても結局は売れ残り、業績に繋がりません。では、現代の営業現場において、物件受託時のあるべきモデルケースはどういったものなのでしょうか。
【受託から成約までの流れモデルケース】
1、物件受託時は売主様の言い値で受け、価格が高いからと言って断らない。
2、高値受託はOKだが、実際に売れる価格(査定価格)はしっかりと説明する。
3、受託後は媒介の種類に関わらず、週に1回は書面で販売状況を説明する。
4、折を見て度々訪問し、売主様との人間関係を構築する。
5、売主様が軽微な減額を申しでてきても拒否し、あくまでも売主様の言い値成約を目指す。
6、どうしても売れない場合は、一気に査定価格までの減額を提案し、一気に売り切る。
上記流れにおいて、受託前の1~2では「媒介を受けること」だけを考えます。受託後の3~5では「売主様との人間関係構築」だけを考えましょう。人間関係ができた後の6では「売りきること」を考える…と、各段階に応じて目標を設定し、階段を一段一段登るように物件の商品化を進めていきましょう。
査定訪問時から売り切ることを考えて、売主様にも理解していただければ良いですが、それでは選んでいただけません。不動産は売主様の財産なのですから、最終的に売主様に納得いただける売り方を実施し、「ありがとう」と言われながら手数料をもらえるようにしましょう。
このことを理解していれば、言い値で受けたとしても結果を出すことができます。
最後、私と同年代のオッサン上司は、適当にお世辞でも言って黙らせてください!
本日の格言
・「高値で媒介受託するくらいなら断れ」は間違い!「売主の言い値」で受託するべし!
・「売主の言い値」で受託した後は、「人間関係構築」し、最終的に「売り切る」ことに専念すること!