毎週水曜日配信、「カジコンの不動産業界地獄耳」
業界歴21年、不動産会社専門コンサルタント 梶本幸治さんが、不動産業界で見た・聞いた話を紹介します。
今回は、携帯電話メールの誤送信と不動産トラブルにまつわるお話です。(リビンマガジンBiz編集部)
今や、メールやLINEはコミュニケーションツールとしてすっかり定着しましたね。
家族や友達、恋人とのメールのやり取りは楽しいものです。
しかし、慌てていたり、酔っぱらっている時はメールの誤送信に要注意。とんでもない相手に、とんでもない内容のメールを送ってしまって、後から顔面蒼白…なんてことを経験された人も多いのではないでしょうか。
今をさかのぼること数年前、LINEが今のように普及しておらず、携帯電話のキャリアメールが主流だった頃のお話です。
最近はあまり見かけなくなったガラケー (画像=写真AC)
私の知り合いである不動産営業マンのLさんは、取引上の悩みを抱えていました。
Lさんが売却の依頼を受けた土地と、その隣地の境界上には低い塀が建っていたのですが、その塀がどちらの所有なのかについて、お互いの見解が異なっていたのです。ちなみにLさんが契約した売主さんは「塀の中央が境界」だと主張し、隣地の方は「塀は全て自分の所有」だと主張していました。
隣地の所有者は山田花子さん(仮名)という方で、女優の山村紅葉さんに似た50代の独身女性でした。問題解決のため、Lさんは山田花子さんのお宅に何度も何度も足を運んだそうですが、山田花子さんはどんどん態度を硬化され、時にはヒステリックに「私の不動産を奪おうとしても、そうはいきませんよ!」と怒鳴ることもありました。
そんな毎日を過ごしていたLさん、独身のため仕事を終えて家に帰っても鬱屈した気持ちは晴れません。
夜の帳が下りた頃、疲れ切ったLさんの足は自然と繁華街へと向かっていました。呑んでも、呑んでも悪酔いするだけだったため、繁華街を後にして自宅に帰ったそうです。しかし、なんだか無性に寂しくなり、誰かにメールしたくなったそうです。この気持ちって少し分かりますよね。
そこそこの男前で、お給料も良かったLさんは数人の彼女と、数人の彼女候補(?)がいる「プレイボーイ」でした。おもむろに携帯電話を手にすると、最近知り合って仲良くなった女の子のアドレスを表示し、メールを送ったそうです。
「何してるの?(^-^)」
「僕はお仕事を終えてから飲みに行ってたよ(♡´ω`♡)」
「一緒に飲みに行って、この前の話の続きをしたかったなぁ(´ω`*)」
しかし、彼女からの返信はありません。
「どうしたの?返事欲しいなぁ。なんか怒ってる?(´・ω・`)」
「この前は少し冷たくしちゃったからかな?ゴメンね(´;ω;`)」
※このメールには「手を合わせて謝っている自撮り写メ」を添付。
「会いたいよ~花子ちゃん(≧▽≦)ゞ」
ん?花子ちゃん?
散々「甘えんぼメール」を送ってから、Lさんはふっと寒いものを感じました。
そしてメールの宛先を見ると「山田花子様」と表示されているではありませんか!
Lさんがメールを送っているつもりだった彼女の名前は「山下花子(仮名)」。
例の隣地所有者と名前が一文字違いだったため、メールを誤送信していたのです。
「塀問題」のやり取り用にと、山田花子さんのメールアドレスを聞いていたことが裏目に出ました。
「酒に酔ってメールなんかするんじゃなかった!」と悔やんでも後の祭りです。
翌日、Lさんの携帯電話に山田花子さんから電話がかかってきました。
電話口の山田花子さんはカンカンに怒り、ふざけたメールを送った理由を問いただしてきます。まさに万事休す。追い詰められたLさんは思わず「山田花子さんと個人的に仲良くなりたいと思いまして、失礼を承知でメールを送らせていただきました」と回答したそうです。
5秒ほどの沈黙の後、電話からは爆笑する山田花子さんの声が…。
その後、ようやく爆笑から立ち直った山田花子さんは、こう告げたそうです。
「あなたね~。どうせ彼女か誰かと間違えてメールしたのでしょ?もうすこしマシな嘘を付きなさいよ。でもなんか憎めないわね。例の塀の件だけど、ちょっとあなたの話を聞いてあげるから、今日、ウチにいらっしゃい。」
それから紆余曲折はあったものの、なんとか「塀問題」は解決。
問題解決後、Lさんと山田花子さんが「個人的に仲良く」なったか否かは…ご想像にお任せします。